小説1

□暗闇の太陽
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カラン…

足下に砕けたコンクリートが転がる。

目の前に広がるのは、すっかり崩れ去った神羅ビル。
瓦礫の山。

俺はその中を彷徨う。

社長室があった付近を彷徨う。

そこで。

いやなものが目にとまった。

「・・・・・・」

愛しい人の、腕。

血溜り。

どでかいコンクリートの塊の下。

白かったスーツは真っ赤に染まってて、俺の思考回路は途切ってしまった。


「死なないって、ゆったのに」


信頼してたのに。
死なないってゆったじゃん。
いなくならないってゆったじゃん。
側に居てくれるってゆったじゃん。

「ねぇ」

あんただったら別に俺をあげても構わないと思ってた。
それくらい。
それくらい大好きだったのに。

死なないってゆったじゃんいなくならないってゆったじゃん側に居てくれるってゆったじゃん。

何これ。誰か説明して。

なんで?

なんであんた?

なんで俺のあんたがこんなことになってんの。

誰か説明しろって。

死んでもいーヤツなんてその辺にごろごろ転がってるだろ、と。

なんで俺のあんたが。

俺でもよかったじゃん。

あんたの代わりに死ぬんだったら本望なのに。

どうしてあんたが。

わかんない。何も。



意味もなく手が震えて意味もなく膝が笑った。



あんたがいない



大ダメージ。

立ってらんない。構わない、倒れちゃおう、だって。



あんたがいない



涙。

なんで泣くかもわかんない。

蹲って嗚咽して涎垂らして。

わかんない。

わかんないわかんないわかんないわかんないよ!




 
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