小説1

□うたかたの日々
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違う。

違うんだザックス。

こんなことしたくないんだ。

でもあんた、居ないし、他に、方法も解らなかった。

「ぁぁぁ…」

見知らぬ男に、ザックス以外に初めて抱かれた身体。

「ザ、ックス…」

目を堅く閉じて、そいつを見ないようにする。

「ザックス…!」






あぁでもあんたは居ないんだっけ







そんなボロボロの状態のときに現れたのがクラウドだ。

ソルジャーの制服、馬鹿でかいバスターソード、
色こそは違うけど、つんつんした髪の毛。
何よりもその、瞳。
その瞳に俺が映っただけで。



俺の気は触れそうになった。



あぁどうしてこんなにも色濃く残ったあんたを忘れられるだろうか。
深淵の闇、その奥、もっと向こう。
一筋の光もない場所。
あんたの居ない現実は、意外に繊細な俺が生きるには救うものが無さすぎた。
でもいくら足掻いてもあんたは居ない、居ないんだ。


クラウドにたじろぐ俺。
容赦もなく襲いかかる見慣れたバスターソード。


俺はどんどん追い込まれていった。


 
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