小説1

□弔いの丘
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  「     。」




目が覚めると、見慣れた天井が視界に広がった。


「・・・・・」


あぁ そうだった

忘れてた

ザックスは死んだんだ

「今…何時…」

カチッカチッカチッ

時計の音を頼りに手探りで探す。

ぼんやりとした意識の中。
毎日毎日目障りなくらい。


「ザックス…」


あんたがこびり着いて離れない。


朝起きて、ご飯食べて、制服に着替えて、出勤して。

「げほっおえぇっ」

トイレで吐く。
胃が空っぽになるまで。
俺の中身を空っぽにしたいから、指突っ込んで、喉傷付けて、人の目を気にしながら、吐く。

ザーーー

流れていく、水を見詰める。
俺の中身も流してしまいたいのに。

俺は生きてる。
レノは死んだ。
もういない。
ここにあるのは、器だけ。
ザックスの愛した、俺の形した空っぽの容器。

でももう無茶はしていない。
クラウドに抱かれたあの日から。
少しの罪悪感から、俺は無意味なセックスをやめた。


 
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