小説1
□車輪の下で
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レノはそれから一言も喋らず、ただ、歩いて、
空を見上げて
「連れてけよ…」
そう呟いて、倒れた。
華奢な肩をルードが支える。
こんな小さな肩に、何が背負えるのだろうか。
何を求めろというのだろうか。
「レノ」
抱き締めて、ルードは泣いた。
なぁ相棒、俺にも担がせてくれないか。
お前の不安も負担も、この人より広い背中で、受け止めてやりたいのに。
赤い髪を撫でる。
前髪を掻き上げると、疲れた青白い表情が眠っていた。
あぁこんなにも愛しいのに。
あの時と同じだ。
何も出来ない。
ただお前が壊れていくのを、見ているしか。
額にそっとキスを落として、ルードはレノを抱えて道を進んだ。
あの時レノは笑っていた。
社長が居なくなった、惨めな自分を。