小説1
□溺愛
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レノの赤い髪から覗く、黒い耳。猫の耳。
形のいいお尻からは、くねくねと動く黒い尻尾。
レノは、猫だ。
細い身体をしなやかに靡かせて誰もを翻弄する、赤い毛色の猫。
「んまぁーいw」
目の前でエビチリを頬張るレノを、ルーファウスがじぃっと見詰める。
レノが猫になってから、一ヵ月が過ぎようとしている。
一ヵ月前。
あの日は雨が少し降っていた。
小降りの雨の中、走る小さな影。
タークスのエース・レノが極秘任務から帰ってきたとき、レノはジャケットを頭から羽織ってそ〜っとオフィスに入ってきた。
俺、ロッドはそれを雨を避ける為だと思っていた。
「レノーおっかえりぃ」
「・・・ただいまだぞ、と」
声のトーンがいつもより低くて、休憩室に向かうレノに着いていった。
「どうかしたのか?レノ」
「なんもねぇよ、離れろよっと」
こっちを向かないレノ。
相当機嫌が悪いみたいだ。
でもこういうときのレノの顔、俺すっごい好きなんだよね。
構われたいっていうか、何というか…
振り向いてほしくてついつい口を出してしまうんだ。
この日もそうだった。