小説1

□the ideal and the real
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任務から帰ってくる帰路の途中のバー。
そこで待ち合わせをしていた。
足早く進む。人混みを掻き分けて。
馴染みの看板が見えてくると。

「ザーックス」

遠くから手を降る赤い髪が視界に入った。
俺はその姿に笑みを浮かべて駆け寄る。

「レノ」

「へへっおかえり〜」

緩く笑うその顔に心が広がる。

「長かったな、と。今回の任務」

「なかなかの長期戦だったな」

「久しぶり」

「ん」

俺の隣りに並ぶレノは、見上げてくる目を細めて嬉しそうだった。

レノ。
俺の好きなやつ。

「腹減ったぞーっと」

扉を開けていつものカウンターの席に座る。
がっしりした俺とは違い、華奢な肩が愛しくて、ついつい見詰めてしまう。
髪が濡れてるな。

「風呂入ってきたのか?」

ちょん、とレノのしっとりとした髪を掴む。

「ついさっきな」

慌ててきたんだ。
レノはそう言って酒を注文した。
俺もビールを頼んだ。
レノは珍しくマフラーを巻いている。

「寒かったのか?」

「さっき社長がくれたんだぞ、と」

「・・・・・そ」

ん?なんかおかしくないか?

「あの人、他人にはケチだからな。物くれるなんて珍しいんだぞ、と」

「仲良いんだな」

俺がそう言うと軽く目を伏せた。

「元気だったか?」

「うん、ザックスは?」

「なぁーんもないぜ、モンスターなんてちょろいちょろい」

おどけてみせると、口を開けて笑った。
そうそう、そんな笑顔を見せてくれよ。

 
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