小説1

□the ideal and the real
3ページ/14ページ


酒とつまみがテーブルに置かれると、レノが待ってました、とはしゃいでフォークを取った。

「ははっそんな腹減ってたのか?」

「ん、ちょー減ってた!ザックスと一緒に食べようと思って食わなかったんだぞ、と」

マリネをフォークに突き刺しながら表情をくるくる変化させるレノ。
込み上げてくる言葉をどうにか飲み込んで会話を続けた。

「食ってるときくらいマフラー外せよ」

「ん〜」

レノの首に巻かれたマフラーに手を掛けて外しにかかる。

「…っ」

そして。

「?どした、ザックス」

「いや…別にー」

無理矢理笑った。
多分、引きつることもなく笑えたと思う。

「今日もルードと任務でさー」

「・・・・・」

レノの言葉が耳に入らない。
見て、しまった。
はだけたレノのシャツ。

「あのハゲなんも喋んねーから俺様が…」

そこにくっきり残った、赤い跡。
キスマーク。

「まじでめんどくせー…ってォィ、ザックス」

「ぇ?あ」

「人の話聞けないコに育てた覚えはないぞーっと」

「ごめんごめん、それで?」

空気を濁さないように、気付かれないように。
今見たものを脳味噌の奥に押し込んだ。

でも。

「ぁーお酒大好き。次何飲もっかなーっと♪」

でもレノ。

その赤い跡は誰に付けられた?

「ザックス何にするー?」

なぁ、レノ。
教えてくれよ。

お前は誰かのものなのか?

俺はお前に…

レノを好きでいいのか?

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ