小説1

□真夜中になるころ
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レノと別れて三ヵ月が経った。
気紛れで付き合い出しただけで、お互い本気じゃなかった。

ザックスの恋人
ザックスの後輩

今は亡き特別な人。
その特別な人の、特別な人。

お互い、本気じゃなかったんだ。

ザックスという共通点で結ばれた間接的な絆。
淡白な関係。
一ヵ月も保たなかった。

彼は俺と居るとザックスを思い出し、ザックスが庇った俺を静かに憎んだ。

俺は彼と居るとザックスを思い出し、彼の恋人を殺した罪悪感に苛まれた。

元々、上手くいくはずがなかった。

「クラウド」

彼に名前を呼ばれる度にヒビが入る。

「レノ」

俺に名前を呼ばれる度に身体が強張る。

そんな毎日。

限界だった。
続くわけない。

俺もレノも、彼を思い出に消化出来ていなかった。

細い身体を抱けば抱く程ザックスは色濃く浮かび上がり、

「クラウド…」

「・・・・」

ついには

「…レノ」

「・・・・・」

互いに返事すらままならなくなっていった。

ザックスの彼は、いつまで経ってもザックスの彼のままで。

ザックスを殺した俺になんか、想いを馳せる意味すらなかったんだと思う。

部屋の沈んだ空気に嗚咽を漏らして。

今はいない彼を、想ったままの二人で寄り添って。

ただの馴れ合い。

衝動も、独占欲も、何もない、ただの馴れ合い。

癒えない傷を埋めようとして、失敗した、ただのバカ。

傷は深まっただけ。

俺という存在は彼を傷付けたし、レノという存在は俺を追い詰めた。

別れて正解。

出会ったことは間違い。

レノは、ザックスを殺さない。

胸の中でいつまでも、都合の良いままに飼い慣らしている。

器だけが足りないザックス。

選ばれた器は俺。

まぁ適役だったと思う。

問題は、その俺もザックスを殺せなかったことだ。

 
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