小説1

□真夜中になるころ
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ザックス

あんたは俺たちには大きくなり過ぎていた。

埋め合わせには、足りない俺。

所詮は身代わり。

レノは別れるとき少しだけ泣いた。


「淋しい」


そう言った。

俺も淋しかった。

でも愛しいとは思わなかった。
多分レノもそうだろう。


「淋しい…クラウド」


淋しいのは、俺の中に見るザックスの影がなくなるから。
至らない俺。
こんなことになるなら、初めから、独りでいればよかった。
彼に寄り掛からなきゃよかった。

少しの安穏の為に、随分と削れてしまった安定が、薄く皮膚を剥ぐような痛みを与えた。

三ヵ月。

俺たちは一度も逢っていない。

その方がお互いの為だった。

最後に交わした口付けは甘かった。
今もたまに思い出す。
赤い髪が揺れて綺麗だったのを思い出す。
レノ、あんたを思い出す。

まだ、あんたがザックスを好きなら。

まだ、あんたがザックスを忘れてないなら。


「レノ」


今は真夜中の一時半。


何度でも、何度でも。

俺たちはやり直せる。

そう思わないか?

都合がよすぎるか?

でもあんたにはまだ、ザックスの代わりが必要だろう?

俺が。

必要だろう?

なぁ、レノ。



「今すぐ、逢いたい」



午前二時。

俺はバイクを走らせた。






レノ、手を広げて、あんたを抱き締めたい。










end
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