小説1

□君とぼくと。
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喫煙室のソファーに深く座って、煙草に火を着けた。
オレンジの火が揺れて、ジジッとフィルターを焦がした。
ふと、目に入るライター。
シンプルなジッポ。

「・・・・」

ルードから貰ったライターだ。
初任務をクリアした記念、とかほざいてた。

「…きしょくわりぃ」

大好きなルード。俺の相棒。そして好きな人。
キス、したかった。
でも現実、触れてしまった唇は。

「…気色悪…」

乱暴にライターをポケットにしまう。
中のガムと当たってカツンと鳴った。

「・・・・はぁ」

ルードから貰ったものだから。
失くさなかった。
任務中落としたときも、敵陣の中突っ込んでって拾いにいった。
それくらい。

それくらい、大好きで大事なルード。

頭ではわかっていても、身体はついてこなかった。

男同士。

いくら好きでも。
そんな簡単には割り切れなかった。

だから。

まだ、想うだけでよかったんだ。
好きで好きでたまらなくなって、やっと触れたいと思ったとき。
その時にキス、してほしかった。

まだ、早すぎた距離の縮め方。
レノも、ルードも、まだお互いわからない、相手の気持ち。
手探りのまま、交してしまった口付けは。

「レノ」

二人の距離を、遠ざけてしまったのだ。

「…なによ」

呼ばれても、下を向いたまま。
レノはルードを見れない。
自分の相棒を見ることすら出来ない。
暫く床を見詰めたままでいると、見慣れた靴が視界に入った。

「レノ」

「あんだよ」

また、苛々が募る。

どうしてルード

「新人…ロッドがお前を呼んでいる」

なんでルード

「そんなの、適当にあしらっとけよ、と」


なんで俺にキスなんかしたの


「…まるで言う事をきかん…お前だったらやると言っている」

「めんどくせー新人…嫌われたなールード」

「早くいかないか」

「ルード」

どうして?

聞きたい、けど。

「なんだ」

「…やっぱいい」

聞きたくない。

「・・・・・・」

沈黙が二人を襲う。
視界に入る、ルードの大きな影。
この影に覆われてしまったら。
レノは床に映る黒いシルエットを見詰める。
もう戻れない。帰ってこれない。
それが、怖い。

「…レノ、俺は」

ぴく

ルードが意を決して話そうとする。
レノもそれを、聞こうとする。

大事な話。

これからについての、道標となる言葉。

 
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