書架
□夢,現&まほろば
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嫌な予感がして、本格的に夜になろうとしている街の中を全速力で走る。
具体的にどんな予感だったのかは、正直のところ分からない。虫の知らせ、とでも言うのだろうか。不意に『彼女』の事が頭をもたげたのだ。
体力を限界まで使って、ようやくのことで校門にたどり着く。
校舎。その屋上に目を凝らす。夜闇に溶けるようにして、幽かだが人影が見える。
この距離では、人が居るとしか分からないハズだが、顔立ちや体つきが手に取るように分かる。そして直感が告げる。
『彼女』である、と。
その瞬間、彼女と眼があった。後で考えると、彼女は微笑んでいたのかもしれない。ともかく、その視線は一方的に、強制的に切られた。
校舎を背景に、闇の中を彼女の体が滑った。