書架
□バンプの遺産
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「・・・新入生の皆さん、入学おめでとうございますーーー」
マイクを通して体育館に響きわたる、生徒会長の型にはまりきった文言。
俺は舞台袖に座って、それを聞き流していた。
「はぁ」
正直、裏方は全くつまらない。何で生徒会に入ったんだろ・・・いや、理由は分かってるんだけどさ。しかも、これが終わったら終わったで、更に面倒くさい羽目にあうのか・・・。今から億劫だ。
「ーー以上をもちまして、私の祝辞とさせていただきます」
会長がいつも通りの洗練された動きで一礼し、檀から離れていく。今日の話は短い方だったな。新入生の気持ちを酌んだのだろう。
来賓、生徒、保護者と退場も恙なく行われ、体育館がほぼ無人と化した頃合いを見計らって、あいつは騒々しく俺のところまで走ってきた。
「海斗、早く行こうぜ!」
十朱匡輔という、ただの色好きだ。ま、その本領を発揮して『式が終わったら、新入生を誘って遊びに行こうぜ』などと平気でいってた訳だな。
「・・・・・・で、お前の眼鏡にかなう子は居たのか?」
新入生が固まっている正門に向かって歩きながら話す。
別に聞かなくても答えは分かっているんだけどね。こいつは『女の子』と言えば、一も二もなく飛びつく野郎だからな。適わない子が居たら、逆に奇跡ものだ。
「もち!」
ほら・・・しかも威勢が良いし・・・
「さて、では早速ーー」
十朱は瞳をキラキラさせて、人混みに分け入り始めた。・・・・・・ギラギラが、適切だな。
居ないことがばれるとまた何かと煩いので。相当な距離を空けてついて行く。
「・・・・・・」
しかしまあ、アイツの女好きにも呆れるというか、感心するな。
声をかけては冷たくあしらわれ、誘っては断られ・・・・・・見ているこちらが悲しくなる。
そんなことを考えながら適当に歩いていたら、不意に左腕を捕まれた。
「ん?」
俺の左腕を掴んでいる主は、真後ろに立っていた。
人懐っこそうな目で、興味深げに見上げてくる。平均より少し小柄な少女。胸に造花があるから、新入生だろう。
「どうした?」
「あの人ってーー」
少女は、先刻から新入生に声をかけまくっている十朱を指さした。
「先輩の友達ですか?」
「・・・・・・いや、違うぞ。全く以て赤の他
人だ」
不愉快さで自分が何を言ってるのか今一理解できないが、まあ良い。
しかしアイツと友人扱いされるだけでこんなにも苛立つとは・・・。アイツと関わるのやめにしようか、いっそのこと。
「・・・・・・」
彼女はその応答では不満らしいのか、俺を掴んだまま門から少し離れたところまで歩く。
「ーー何だ?」
少女は黙って俺の顔を見上げている。何かを疑っていると言うよりは。何かを確認しているような視線。
別に、個人的には見られて困る顔はしていないと思うのだが、触れて欲しくないことは山ほどある。
「ーーー」
彼女が何か言おうと、口を開きかけたときにそれは起きた。