リクエスト

□残る手段は
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舌打ちを一回。二回。
折角高木先生を真城先生から引き離せたと思ったのに、彼はやはり頭が良い。
僕を一人で連載出来るように仕向け、さっさと真城先生の元へ戻って行ってしまった。

高木先生はやっぱり分かっていた。僕が、真城先生から自分を引き離そうとしていることを。
真城先生は高木先生が僕に付きっきりで不安だったみたいだけれど、実際は話作りの才能の無い僕に苛々しては怒鳴り上げるばかりだった。

僕だってあんな奴に手伝ってほしくなかったけれど、真城先生を手に入れるにはまず邪魔者を排除しないといけない。
高木は真城先生を差し置いて他の女と結婚したんだ。
そんな裏切り者から真城先生を救い出せるのは僕だけだ。

「白鳥くん、連載おめでとう」
「有難うございます、真城先生!」

真城先生の顔は前と違ってすっきりとしている。
高木が本当はPCPを、自分を思っていてくれたことを知ったから。

気にくわない。
引き離そうとしたのに、これじゃあ僕はまるで恋のキューピッドじゃないか。

「白鳥くんいなくなっちゃうのか。寂しくなるな」
「僕も寂しいです」

心底寂しそうな顔をする真城先生。
可愛い顔。僕もよく女の子みたいって言われるけれど、真城先生はそれだけじゃない。
気だるそうな表情とか、細い首筋とか、色気って言うんだろうか、まあそういうところが好き。

「じゃあ、僕帰ります」
「うん、お疲れ様。頑張ってください」
「………はい」

僕が背を向けると、見送ろうとしてくれているのか真城先生が立ち上がり歩み寄る。

僕より年上なのに、僕より少しだけ低い身長と少しだけ軽い体重。
ふらついた足取りで、先生はにこりと笑った。

「………真城先生って、可愛いですよね」
「は? どうしたの、急に……」
「知ってますよ。高木先生と付き合ってるんですよね」
「なっ………!」

露骨に狼狽えて、先生は頬を赤く染めた。

「何言ってるんですか、そんなわけないでしょう。高木には香耶ちゃんがいるし、第一男同士なんて……、」
「僕の予想ですけどね、高木先生が香耶さんと付き合う前からお二人は付き合ってたんじゃないですか?」
「…………、」

当たった。悔しかった。
当時出会っていたのが高木先生じゃなくて僕だったら。
真城先生は俯いて顔を見られないようにしている。

そんな彼の腕を引っ張ると、僕より力の無い真城先生は引っ張られるままそこにあったソファーに押し倒された。

「わっ……! 白鳥くん、?」
「そんなに高木先生がいいですか。恋人がいるのに、平気で女と結婚するような奴が?」
「…………平気じゃない。何度も俺に謝ってくれた」
「謝っただけですか? 最低ですね、僕だったら真城先生にそんな辛い思いさせません。絶対に」
「言ってる意味が……、」

そう言いながら先生は眉を寄せた。
本当に本当に、鈍感な人。


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