黒バス


□ただ純粋に
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昔、テツにこんなことを聞いたことがある。
もし、もしもの話だ。お前のことを好きだと言う奴が二人現れたらどうする、と。
テツはいつもと同じ凛とした表情でこう答えた。

勿論、僕のことを心から愛してくれる人を選びます、と。


*


誰もいない部室。下校時間なんてとっくに過ぎていた。
薄暗い部室で抱き合う二つの影。
いや、抱き合ってなんかない。
嫌がるテツの両手首をネクタイで拘束して、腰にまたがって抵抗する身体を押さえ付けていた。

「んっ、ん」

やだやだと泣き叫ぶ声が不快で、テツの啌内に指を突っ込んで掻き回す。
半分ほど無造作に脱がされた制服が、テツが俺から逃れようと身じろぎをする度に乱れていった。

唾液が絡まった指を引き抜くと、はあはあと荒い呼吸を繰り返すテツが苦しげに俺を見上げた。

「はっ……、青峰く…、なんで、こんなこと………っ?」
「っ……わかんねえのかよ、」
「わかりませ…………、あっ、」

心底不思議そうに問うその目は、清純でどこまでも澄みきっていた。
その瞳に映った俺の欲に呑まれた顔。
目をそむけるようにテツの薄い腹に指先を這わせた。

白い身体にはいくつもの痕が残っていた。
きっと黄瀬が付けたものだろう。
自分の所有物だとでも言うように、まるで持ち物に名前でも書くような感覚で。

そしてそんなのは嘘だとわかっていた。
黄瀬の、テツへの愛を俺は、俺達は十分に知っている。

彼を労り、そして何より黄瀬が心からテツを愛していることを俺達は知っていた。

だから、余計に悔しい。

俺だってテツを愛している。
俺だってテツの身体に所有印を刻み付けたい。
俺だってテツに愛されたい。

それが叶わないとわかっているから、こんなにも苦しいのだろうか、視界が霞むのだろうか。

「テツ……、テツ、」
「あ、おみねく………、やだ……やめてください……、」
「なあテツ?俺じゃ駄目なのか?俺じゃお前を幸せに出来ない?」
「は………、」
「あいつの何処がいいんだよ。顔?性格?身体?」
「ちが………」
「何が違うんだよ!」

いきなりの怒号にテツがびくりと肩を震わせて固まる。
それをいいことにテツの足を肩にのせ、閉ざされた蕾へと既に上を向く自身をあてがった。

力では敵わないと大人しくなった身体に反して、口からの抵抗はやまない。

やだやだと駄々っ子のように繰り返す口をキスで無理矢理黙らせてテツの中へと欲望を突き入れた。

「ふっ、ああ、」
「くっ………きつ、」
「青峰くん……やだ……、」

テツの頬を涙が伝う。
それを無視して腰を動かすと、テツは咄嗟に俺の服をつかんで乱暴な揺さぶりに堪えようとした。

ああ、この手が、俺を繋ぎ止めようとする手だったらいいのに。

黄瀬に沢山の愛をもらったんだろ。
黄瀬に沢山の愛をあげたんだろ。
なあ、俺にも少しわけてくれたっていいだろ。

なあ。
俺だって、お前に愛をあげたいんだよ。

必死に快感に堪えて声を抑える姿なんて見たくないのに、俺の身体はもう言うことを聞かない。

俺のそういう性格を、誰よりも知っているのはお前だろうに。

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