黒バス


□ただ純粋に
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もう、揺さぶられる僕の身体に抵抗する力なんて残っていない。
仮に残っていたとしても、体格差のせいで青峰くんを押し退けようだなんて無謀な行動に過ぎないけれど。

気持ち悪い。嫌だ。
気持ちはどんどん冷めていくのに、無駄に素直なこの身体が憎い。

青峰くんの形をいやというほど感じて、先端が前立腺を掠めると女みたいに高い声が出た。

もう涙も出ない。
冷えきった心でどんなに愛をささやかれたってそんなの意味なくて。


「き、せく………っ、ふっ、あ、あ」
「………あ?お前今なんつった、」
「きせくん……!やだ、ぁ……う、」
「今ヤッてんのは俺だろ!他の男の名前呼んでんじゃねえよ!」
「…………あ、おみ、」

あまりの驚きに思考が一瞬止まった。
青峰くんが、泣いている。

泣きながら、必死に僕の身体を揺さぶって。
子供みたいだった。今の彼はまるで母に行かないでと駄々をこねる子供のよう。

どうすればいいの。慰めたところで彼はどう思う。

冷静になる思考が快感をフェードアウトさせていく。
反応が薄くなった僕に気付いた青峰くんは自分が泣いていることには気付いてないみたいだ。
ずる、とすっかり萎えた陰茎を引き抜いてゆっくりと僕に覆い被さった。
僕がつぶれてしまわないように加減を忘れずに。

「テツ………わりぃ、こんなことするつもりじゃ、」
「青峰くん、」
「分かってんだよ……、あいつに敵わないってことくらい。バスケじゃ俺に勝てたことないのによ………」
「青峰くん、」
「なあ、どうして俺じゃないんだよ」

青峰くんの大きな手が僕の頬をすべって耳をくすぐる。

壊れ物を扱うかのような手付きに目を細めると、は、と息を吐いて彼の手が離れていった。

「僕は、」

こんな掠れた弱々しい声でも、君に届くかな。

「青峰くんのことが好きです。そして、黄瀬くんを愛しています」
「…………知ってる」

ギリ、と青峰くんが歯をくいしばる。
僕は指先で彼の唇をつついて、何か言おうと薄く口を開いた瞬間を狙って指を突っ込んだ。

青峰くんが驚いて固まる。
軽く指先で舌を擦ると、おずおずと僕の指を舐めたり甘噛みしたりしておとなしくなった。

これで反論は出来ない。

もう片方の手で頭を撫でながら、震える自分の唇を叱咤して。

「僕は……君に愛をあげられない」

青峰くんの眉が切なそうに寄せられる。
溢れ出る涙が彼の濃い肌に更に色濃い筋をつくって。

「君が好き。友人として、相棒として大好きです。だから、」

指を引き抜いて彼の口を解放する。

子供を突き放す残酷な親。
恨まれてもいい。君にはその権利がある。

低くうめく彼の鼻先にキスをして。

「テツ…………テツ……」
「ずっとずっと、僕の相棒でいてください」
「テツ………っ!」

止まらない涙を拭うことも出来ずに。

ただ純粋に僕を愛してくれてありがとう。

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