Syusai-N-


□インクのせい
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「サイコー、手とか顔とか
インク付きまくってるぞ」
「いつものこと」

だからいつも気になってるんだ。
最高は漫画を描くといつも
ひどい顔になる。
どうやったらそうなるのか逆に聞きたいが、インクがついている顔も中々いい。

「ほら、とってやるから顔あげろ」
「ん…」

秋人の言葉に最高は頷くとペンを置いて顔を上げた。
そして、目を瞑って秋人の手を待つ。

(あれ、なんか今日はやけに素直だな…)

いつもとは違う最高の態度に少し驚くが、待たせるわけにもいかないので
秋人はインクで汚れた最高の顔に手を伸ばした。
親指でぐっとインクを拭う。
秋人の手は自然と最高の頬を包み込む形になり、なんだか誓いのキスの直前みたいな格好になった。

(サイコー、顔きれいだな……)

インクは、とれるものはとれるが、中にはすっかり乾いてしまって指先だけではとれないものも出てきた。
それなら仕方ない、と秋人は最高の顔に口付け、そのまま乾いたインクを舐めとり始めた。

目を閉じていた最高は突然の滑りに驚き、身体をびくんと跳ねさせて目を開けた。

「なっなにしてんだよっ!」
「インク乾いちゃってるから、舐めてやってんの。」
「はぁ?インクだぞ?死にたいのか」
「こんくらいで死ぬかよ」

と言って最高の顔を舐め続けるが、実は既にインクはとれてしまっている。
ただ最高の顔を舐めたいがために、インクを口実にしているだけなのだ。
ついに我慢出来なくなった秋人は口を一旦離して今度は最高の唇に口付けた。

「んっ!ん……ふっ」

いきなりキスされ息が苦しくなる。
深いキスは最初だけで、あとは軽くついばむ様なキスを何回も繰り返した。
ちゅっ、と短い音が何度も部屋に響き渡る。
その音と二人の吐息しか聞こえなくて、最高の頬は徐々に赤く染まっていく。

「サイコー、顔赤い」
「うるせー、ばか!……でも」

最高は俯くと、秋人のジャージをぎゅっと握りしめてぼそぼそと

「シュージンの舌、気持ちよかったよ……?」
「サイコー……」

ガタッとそばで音がして、最高が顔を上げると、
何故か秋人がインクを持ち上げて蓋を開けようとしていた。

「な…に、してんの?」
恐る恐る聞くと、秋人は満面の笑みになって
「サイコーの全身にぶっかける!」
「!!」

慌てて逃げようとするが、そんなのも予想の範疇だった秋人は余裕で最高を捕まえた。

「きれいにしてやるからな!」
「もうやだっ!!」
「文句はインクに……な?」

今度からは、こまめに顔を洗いに行こうと決意した最高であった。



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