Syusai-N-


□後ろの過保護
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「ファイトー、おーっ!」

夏に入って間もないこの時期、真上から照りつける太陽を恨めしく思いながら
最高はため息をついた。
この暑さの中、追い討ちをかけるように開催される体育祭。
隣では秋人が暑い暑いとぼやきながらも準備運動をしっかりと行っている。

最高は運動が苦手なわけでもないが、最近は仕事場にこもりきりで体育の授業以外ではほとんど運動していない。
きっと身体も鈍っていることだろう。
何よりもやる気が起きない。
今最高は漫画しか眼中にないわけで、正直学校行事などはどうでもいいのだ。

「サイコー大丈夫か?目が死んでるぞ」
「ん、暑いだけ……?!」

秋人の方を見ずに返事をした途端、腕に冷たさを感じ、
最高は驚いて腕を見遣った。


「……何してんの」

「サイコーの白い肌が焼けないように、日焼け止めぬってんの」

「はぁ〜?やめろよ、女子じゃあるまいし。つか皆見てるから!」

見遣った先には秋人が真剣に日焼け止めクリームをぬっていて、最高はうげ、と顔をしかめる。
最近、秋人の過保護さに最高は辟易している。
何かと心配されては逆に迷惑だというのに。
特に学校でそのようなことをされるのは正直嫌だった。
周りに二人の関係がばれては、何かと厄介だろう。
男同士がおかしい、それは最高と秋人が一番よくわかっていたから。
それでも秋人は優しくしてくるし、そこまで嫌悪には感じていない最高もいた。


秋人がぬり終えたと同時にアナウンスが聞こえ、最高と秋人は競技に参加すべく
のろのろと立ち上がった。





「綱引きか……」

一本の綱を引き合って、白線を越えてしまったチームは敗北。
なんとシンプルなルールだろうか。
一番楽だろうということで選んだ競技だが、周りの生徒達は興奮してかなり本気だ。

(やる気のある人達に任せて、俺は引いてるフリだけでもするかな……)
きっと後ろにいる秋人も同じことを考えていることだろう。
笛の音を合図にその場にいる全員が綱をつかむ。
最高も緩く綱をつかみ、開始の合図を待った。




「――――っ!!」
開始の笛が鳴った途端、最高の身体が大きく前へ揺れる。
相手チームの実力かやる気かわからないが、最高のチームはいきなり劣勢に立たされた。

「うわ、皆本気だな……!」
後ろから秋人の呟きが聞こえる。二人はやむを得ず、本気を出すこととなった。


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