Syusai-N-


□時間 1
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「温泉って……」
「露天風呂楽しみ〜」
「まじか……」

修学旅行。
正直休んででも漫画をかきたかったのだが、秋人に思い出作りだと言われ、
仕方なく参加することにした。
乗り気ではなかったが、いざ出発してみるとこれが結構楽しい。
道中も、隣は秋人だし、クラスメイトが色々と出し物をしていて暇だとは感じなかった。


「おい男子!さっさと風呂入れ!」
先生が叫び、男子達がノロノロと浴場へ向かう。
温泉ということもあって最高は上機嫌で向かおうとするが、秋人はあまり行く気にはなれなかった。

「シュージン?おいてくぞ」
「あぁ、ごめん。今行く」

(サイコーの裸、男子共に見られたくねぇな……)

最高は自分が男からモテることに気付いていない。
そりゃあ、同性に恋愛感情を抱かれると思うことなど普通はないと思うが、最高の場合、

明らかに男子達に言い寄られているのに、持ち前の鈍感さで全くそれに気付いていない。
見てるこっちはいつ最高が襲われるか気が気じゃないというのに、当の本人はなんの疑いも持たない。

温泉といったら、男子は女子が気になりそうなものだが、
最高はへたするとそこらの女子よりも可愛いから、
男子達も女子浴場へは目もくれなかった。
先程も最高のことを話してる輩を見かけたし、温泉なんかクソくらえだ。
最初は修学旅行への参加を渋っていた最高に、行くように諭したのは秋人自身だが、
まさか温泉があるとは思いもしなかったのだ。
スタスタと歩いて行く最高に小走りで追い付き、秋人は周りを警戒し始めた。

「わ〜、脱衣所狭いな、シュージン」
「最悪だ……」

狭い。とにかく狭い。
元々、大人数向きの温泉ではないのだろう。
なぜこのホテルを選んだのか教師に文句をつけたいところだが、
今、そんなことはどうでもいい。
なにせ肩がふれあってしまうくらいの密着状態なわけだから、
どさくさに紛れて最高にボディタッチしようとする奴が必ずいるはずだ。
そんなことは秋人が許さない。
秋人は最高をかばうようにしながら最高を壁際へさりげなく押しやった。

「こんなに狭いと身体あたるな。男同士で気持ちワリ〜」

あはは、と笑う鈍感な最高に少々苛立ちを覚えるが、
それよりも愛しさが勝つから秋人はそうだなと優しく笑い返した。
と、ついに最高が服を脱ぎ出した。
目を光らせて周囲を見遣ると、やはりほとんどの男子が最高をチラチラと盗み見ていて、秋人は小さく舌打ちをした。
自分の身体で最高を隠しながら、秋人は目が合う度に男子達を睨み付け、
最高に気付かれないようささやかな牽制を続けた。


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