Syusai-N-


□愛の証
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「…………どうすんだよ、これ……」

キスマークを付けられた。
しかも首に。キスマークだけは付けるなと念を押していたのに、
独占欲の強い秋人に無理矢理付けられてしまったのだ。

冬ならまだ良かったというのに、今は憎たらしいくらいの暑さが続く真夏。
襟を暑いからと言って緩めればキスマークが見えてしまうし、
かと言ってきっちりボタンを閉めているのも、端から見れば結構おかしい。

(だから嫌だったのに……)
鏡の前ではぁ、とため息を吐いてみる。
そして顔を上げると、鏡には最高への当て付けのように
ボタンを第二まで開けている秋人がうつっていて、鏡越しに目が合った。

「サイコー、なにため息吐いてんの?しかも鏡の前で」
「お前がこんなの付けるからだろ!」
「は?……あー、キスマークな。そのくらい気にすることないのに」
「シュージンはいいよな!付ける側なんだから!」

秋人がまるで他人事のように言うから、最高はムキになって叫び返した。
最高の大声に秋人は若干怯むが、なにか思い付いたのか、
急に最高の肩をガシっとつかんだ。

「じゃあサイコーも俺にキスマーク付けりゃいいんじゃね?それでお合いこ」
「はぁ〜?ヤだよっ」
「じゃあどうすんの?こんな暑いのにそんなんで行くわけ」
「だから誰のせいだっ!」

このままでは埒があかない。
最高は少し自分を落ち着かせて秋人に向き直った。

「付けんなって言ったじゃん……」

上目使いで訴えてみる。
よく秋人に上目使いを頼まれてはいたが毎度のごとく断っていたため、
意識しての上目使いはこれが初めてだ。
それはかなり蠱惑的で、秋人は必死に理性を保った。

「だって、最高は俺のだろ?そういう証を付けたかったんだよ」
「証って……。こんなのなくたって、俺はシュージンのって決まってる」
「サイコー……」

秋人がうっとりとしてくる。
が、それは最高の思惑通り。
最高はにやりと笑むと、秋人の唇に自分のを重ねた。
驚く秋人を至近距離で見つめ、最高は耳元でこうささやいた。

「そんで、シュージンも俺のな。だから……一つだけお願い聞いてくれる……?」
秋人はブンブンと首を縦に振り、聞く聞くと連呼する。
その衝撃でメガネがずり落ちて、最高は笑いながらメガネを直し、お願いを突きつけた。


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