Syusai-N-


□全部好き
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「たしかに……。サイコーは俺を信じてくれなかった。信じてほしかったよ。けどさ、あの時の俺を信じろなんて……。無理な話だよな」
「シュージン……」

最高の目に涙がにじむ。
最高に話しかける前は、こんなに涙もろいなんて知らなかった。
あんなに笑うことも知らなかった。
あんなに怒ることも。
いつしか秋人は最高なしでは生きていけないようになっていた。
ネームは家でも書ける。
それでも最高と少しでも一緒に居たくて仕事場で書いた。
原稿に真剣な表情でペン入れをしる最高が好きだった。
徹夜したせいで目の下に出来た隈さえも愛おしかった。

手放したくないのに。
ネームが上手くいかないからといって秋人は見吉を理由に最高から逃げた。
全ては臆病な秋人の責任。最高は、何一つ悪くなかった。

「ごめん。ほんと、ごめんな……。だから、俺から離れていかないでくれ……」
「シュージン……」

下を向いて溢れた涙を最高に見えないようにした。
涙がメガネのレンズにたまり、秋人はメガネを外した。
最高の手首をつかむ力が強くなる。
最高が何処にも行ってしまわないように。
アザが出来るほど強くつかまれても、最高はそれを振りほどこうとはしなかった。

「シュージン……。俺のこと、好き?」
「……きだ。好きだ……っ! 愛してる……」
「………うん。俺も、愛してるよ」

秋人が泣くところなんて初めて見た。
いつもは最高が泣いてばかりで、それを秋人はいつも拭き取ってくれて。
今だって泣いているけど、秋人の比じゃない。
秋人が最高のことでこんなに泣くなんて。
最高はどうしたらいいか分からなくて、ただただ涙を溢す秋人を見つめていた。

しばらくして秋人は、少し落ち着いたのか顔を上げ、
袖で涙を無造作に拭うと真っ赤になった目で最高を見た。

「わり……。はー、サイコーに泣き顔見られちまったな……」
「シュージン」
「ん? ………!」

無理に笑う秋人が消えてしまいそうで。
最高は秋人に抱き付くと、唇を無理矢理押し付けるようにキスをした。
驚いて硬直している秋人に、最高は何度もキスをし、頬を染める。
次第に秋人の身体から力が抜け、最高の背中に腕が回された。
秋人からになった口付けに、最高はようやっと秋人が戻って来たことを実感した。

「シュージン……。俺、泣いてるシュージンも好き。全部好き。……シュージンが俺のことを全部受け入れてくれたみたいに……」
「サイコー……。ありがとな」

側で溶けているアイスも気にせず、二人はキスをし続けた。

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