Syusai-N-


□色んな思いで胸がいっぱい
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「は〜。新年会か……、緊張する……」
「シュージン、ガチガチだな」
「サイコーこそ、足震えてね?」
「震えてねえし!」

連載が決まった。原稿料が上がった。アシスタントが来た。
何もかもが新鮮で、まるで初めて持ち込みをした時の様な緊張感。

秋人に誘われて、今までがむしゃらに漫画をかいてきた。
連載が決まったと聞いた時、感動したけど、なんだか切なかった。
もう仕事なんだ。毎週締め切りに追われるんだ。
遊び気分でかいたことなんてなかったけど、漫画をかくのはすごく楽しくて。

けど、もう子供じゃない。
たとえ高校生だろうと、連載陣の中に入ったんだ。
緊張する。新年会も、連載も。

「あ、電話……」
「誰だ?」

最高は電話に出た途端、びしっとかしこまり、
ぎこちなく返事をしたと思うと電話を切った。

「迎え……。もう来てるって……」
「早っ! 下降りようぜ!」
「お、おう」

慌てて外に出ると、そこには最高と秋人には

とても似つかわしくない、立派な車が二人を待っていた。
乗り込むだけでも緊張する。
ゆっくりと動き出した車内で、秋人は挨拶の練習をし始めた。

「えっと……。初めまして、亜城木夢叶というペンネームで2月から
 『疑探偵TRAP』という連載をさせていただく2人組の高木と申します。よろしくお願いします。……長くね?」
「いいって。俺は真城です、だけで済むし」
「あー、きったねー! サイコーも喋れよ!」
「やーだ。俺向いてないし」
「へ……」

何故か秋人が間抜けな顔をして固まる。
何事だと顔を覗き込めば、秋人は携帯を取り出して何やら操作を始めた。

「なに?」
「サイコー……、さっきのもう一回言って」
「さっきの? 俺は真城です、だけで済むし?」
「違う。その後のやーだ、ってやつ」
「なんでだよ」
「なんでって……。かわいかったから?」
「はぁ〜?」

最高は思いきり不満を露にして顔を歪める。
無意識に言った言葉を可愛いと言われるとは思いもしなかった。
第一どのように言ったかなんて覚えていない。

それでも秋人がじっと携帯を持って構えているものだから、
最高はため息を吐くと秋人の望みを叶えるべく先程の会話を思い出した。


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