Syusai-N-


□本当の気持ち
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どんなことをしてでも、たとえ彼に嫌われようとも、自分のものにしたかった。

「俺と組んで、漫画家になってくれ」
「断る」
「………あ?」

一言で。秋人は数秒固まったまま最高を見つめてしまった。
その視線に、最高は顔を歪めて拒絶を示す。

「もしかして、今俺に嫌悪感じてる?」
「感じない方がおかしいだろ。いきなり漫画家になりましょうって、アホかお前は」
「これでも学年一位ですが」
「学力は、な」

腰に手をあて、下から睨めあげるように秋人を見て強く言い放つ。
明らかに敵意を宿した目。
全てを拒絶されていた。けれど、秋人も伊達に学年一位ではない。

「予想済みだっつの」
「は?」
「お前、俺のことどう思った? いや、今まで俺のことどう思ってた? 何でもいい。容姿でも、中身でも」
「……なんだお前。きもちわる」

最高が訝しげに眉を寄せる。
秋人は頭は勿論、そこそこ容姿にも自信があった。
何人かの女子に言い寄られたこともあるし、少なくとも嫌われてはいない。
いくら一度も会話を交わしたことがないとはいえ、
学年一位の彼の名は必然と彼の耳に入るだろう。
何となく勉強をしてきただけだったが、今この時ばかりは
今までの自分に最大級の感謝を示したい。

最高は真剣な秋人の表情に、ため息を吐いて近くの机に腰掛けた。
そして宙を見つめ、指折りをしながら話し出した。

「自意識過剰、周りを見下してる、馬鹿には興味なし、早く卒業したい、漫画が好き。……こんな感じかな」
「最後だけじゃん、合ってんの」
「ほざけ」

最高は薄く微笑み、握った状態になった手を開いて再びぎゅっと握った。
透き通った瞳が、ゆっくりと秋人を捉える。

「ま、かっこいい方だとは思うけど?」
「……そう。じゃあ、さ」

秋人は最高が座っている机の椅子に座り、下から彼を見上げて低い声で囁いた。

「漫画家、なろうぜ」
「…………いや」
「断るんだったら、ヤるぞ」
「…………は?」

最高の、机についている手が驚きでずり落ちる。
危うく転げ落ちそうになった最高の身体を慌てて支えてやると、
最高はその手をぱしっと払い退けて秋人を睨んだ。

「からかってんの。最低だな」
「本気。お前って可愛い顔してるよなー。漫画家になるのと、ヤられるの、どっちがいい?」
「どっちも嫌だ!」
「ふーん……」

秋人は立ち上がり、最高を見下ろした。
そんな秋人を見上げて、最高がうっ、と怖じ気づく。
それでも目の鋭さは緩めずに、秋人を視線で威嚇し続けた。
そっと肩に手を置くと過剰な程に彼の華奢な身体がびくんと跳ね上がる。

「怖い?」
「は、はぁ?! んなわけねえだろ!」
「……強情」

秋人はそう呟くと、最高のネクタイを引っ張って立ち上がらせ、床に押し倒した。
あらかじめ自分の鞄を床に置いておいたから、
最高は床に頭を打ち付けることなく秋人にのし掛かられた。

「……え? マジ、で?」
「マジ」

最高はぐいぐいと秋人の胸板を押し返すが、秋人はびくともしない。
それでも最高は秋人を睨み続け、胸板を押し返す。
当然最高の下半身は無防備になるわけで。
秋人は最高の脇腹を制服の上からそっと撫で、その細さに目を細めた。

「ぁ……っ! ちょっ……」
「ほせ……」

いくら放課後の教室とはいえ、また誰かが入ってくるかもしれない。
誰かに見られるかもしれない、そんな状況下で声を出せるはずもなく、最高は悔しさで唇を噛んだ。

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