Syusai-N-


□纏わりつくように
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俺ももう高校生だし、誕生日ごときで騒ぐ年頃でもなくなった。
だから特に何も考えてなかったし、むしろ18までにアニメ化という目標を達成出来るのかという焦りがつのるばかりだった。

俺達はいつも通りに他愛のない会話をしながら学校への道のりを自転車で駆け抜けた。

「あ、宿題やってない。シュージン後で見せて」
「サイコーからキスしてくれるなら」
「じゃあ他の奴に借りるわ」
「ごめん、冗談だって!」
「わかってるよ」

教室が近付いてきたから、俺は無理矢理話を終わらせた。
教室に入って来た途端にホモみたいな会話が飛び交っていたら周りは引くに決まっているから。

後ろで平謝りをするシュージンにため息をつきながら俺は教室のドアを開けた。

「真城ー、誕生日おめでとー!」
「サイコーやっと俺と同い年かよー」
「何か欲しいのある? 買ってやるよ」
「え………、」

びっくりした、なんでこいつらが俺の誕生日を?しかもわざわざおめでとう?
呆然とする俺をクラスの男連中は容赦無く取り囲んで、いつの間にか身動きがとれなくなっていた。

後ろのシュージンに助けを求めるが、彼は薄く微笑んでそのまま席に着いてしまった。

「シュージン……?」
「なあ、真城。なんか欲しいもの言ってみ?」
「買ってやるからさあ!」
「いや、あの……。別にいいから、」
「つれねーなー。まあ、そこがいいんだけど」
「…………」

やけに馴れ馴れしく話しかけてくる男連中の間をぬって何とか席にたどり着く。
後ろをそっと見遣ると、シュージンはいつも通り授業の準備をしてからネームに取りかかっていた。

(俺も下書き進めとかないとな、)
シュージンの態度がちょっと気になるけれど、今は原稿を完成させるために集中しないと。
俺は頭を振って誕生日という考えを振り払った。


*


「シュージン……」
「真城ー! 今日俺らとどっか行かね?」
「え……、」

肩を叩かれて振り向くと、そこには朝の時と同じ男子達が笑顔で立っていた。
断ったはずなのに。思わずはあ、とため息が洩れて、俺はその手を振り払った。

「だから、いいってば別に。俺、今日用事あるし、」
「……また高木とデート?」
「は?」
「だって……なあ?」

男子達が顔を見合わせて頷き合う。
ばれてる。なんで。
黙っていたら男子達に確信を持たれてしまう。けど、驚きで何も言葉が出ない。
一人の男が俺の顔を覗き込んで「やっぱり、」と片目を不快そうに歪めてささやいた。
目をそらすと、後ろでがた、と席を立つ音が聞こえて、男子がそちらに注目した。

「あ、高木、」
「サイコー、帰るぞ」
「あ………、うん、」
「おい、今日くらい譲れよ。お前いつも真城といるんだからさあ、一日くらいいいじゃん?」
「サイコーは物じゃねぇし」
「……なあ真城、たまには遊ぼう。もうずっと遊んでねえじゃん?」
「………気持ちは、嬉しい。ごめん、」

俺達は足早に教室を抜け出した。
いつの間にか俺に友達と呼べる人がいなくなっていたことに今気付いた。
いるのは相方だけ。でも、それに不満を感じることなんて今までなかったから。
これが俺の日常。今更、誰にも壊すことなんて出来ないから。
教室からガタン、と机を蹴る音が聞こえた。


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