Syusai-N-


□昼の過ごし方
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4限目終了のチャイムが、絵の練習をしていたらしいサイコーの顔を上げさせた。
そのまま彼は席を立って、前髪を鬱陶しそうにかき上げながら俺の元へとやって来た。

「屋上、行こうぜ」
「ああ」

ざわざわと騒々しい教室から抜け出し、俺とサイコーはいつも通り昼飯とネームのノートを持って屋上へと向かった。

「サイコー、ずっと絵描いてたな」
「見んなよ……。まあ、そういうシュージンもどうせネーム書いてたんだろ?」
「まあなー、」
「うわ、やめろって」
「人いないんだからいいじゃん」

屋上の扉を開けて人がいないのを確認する。
話しながらじゃれるように肩に腕を回すと、サイコーは頬をうっすら染めてため息を吐いた。

「んなことより、早く飯食おうぜ。ネームも見たいし」
「だな」

折角の昼休みなんだから、有効活用したい。
そんな思いから、俺達はいつも昼食もそこそこにネームを練っていた。

「またコーヒー牛乳。サイコー、それ好きだよなー」
「悪いかよ」
「全然。可愛いなーと思って」
「はあ? つーか早く食えよ。食っちまうぞ」
「いいよ。ほれ」
「いいのかよ。……ん、」

俺が食べていたパンを差し出すと、サイコーは小動物みたいに近寄って来てそれを一口食べた。
「ありがと、」と再びコーヒー牛乳のストローをくわえるサイコーの唇を凝視していたら、それに気付いたサイコーが訝しげな目で俺を見上げた。

「なんだよ……。飲みたいなら言えばいいだろ、はい」
「あ、あぁ……。サンキュ、」

少し、いや、大分意味を取り違えているサイコーに内心で苦笑しながら、俺は差し出されたコーヒー牛乳をありがたく頂戴した。

「よし。じゃあネーム見せて?」
「ん。………なあ、サイコー」
「なにー?」
「……したい、」
「…………一応聞くぞ。何を?」
「いやだから、セッ……、」
「ストップストップ! シュージン頭大丈夫か?! ここ学校!」
「そりゃあ分かってますけど」
「分かってんなら言うな、馬鹿!」

真っ赤な顔でそう叫ぶと、サイコーはあからさまに距離をとってから俺を一睨みしてノートに目を通し出した。

それが気に入らなくてサイコーを壁に追い込むように詰め寄ると、サイコーはびくっと肩をゆらしてノートで顔を覆った。

「も、もう時間ないし! せめて学校が終わってから……!」
「待てない。……それに、時間がないならサイコーだけが気持ち良くなればよくね?」
「は、はあ? 何言って……わっ、」

サイコーの視界にはノートに書かれたネームしか映っていないから、俺が手を伸ばしているのにも全く気付かない。
俺の姿が見えないせいで身構える間もなくシャツの上から脇腹を撫でられて、サイコーは軽く飛び上がる勢いで肩を揺らした。

「ばか……! 場所くらい考えろ、」
「屋上だぞ? 誰も来ないって」
「外って時点でだめだろ、……ぁ、」

力の抜けた手からノートが落ちて、顔を上げたサイコーと目が合った。
いつも一緒にいるけれど、じっと見つめ合うことなんて普通はない。

恥ずかしさからかそっと目線を下にやったサイコーの顎をつかんで上を向かせ、脇腹を撫でながらキスをした。

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