御伽の国のアリス
□マッド・ハッター・・・
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湖畔沿いを歩く二人
時折、小鳥たちはさえずり
愛里子を歓迎した
「さあ、ついたよ。ここが仕立て屋だ」
そこには白い壁に茶色い木のとびら、赤い屋根のかわいらしい一軒家が建っていた
湖の藍に映える綺麗な赤
扉の上には看板らしきものが掛かっている
「中に入ろう」
チェシャ猫に促され建物に入る愛里子
!?
「ひ・・・広い・・・」
そこは外見からは想像できないくらい広い部屋だった。所狭しと並んだ箪笥や、ハンガーは狭くも綺麗に並んでいた。
「アリスらしくないな?外見は嘘をつく。この世界では忘れちゃいけないよ」
私らしいってなんだろ?
愛里子は考えていると
「いらっしゃいませ。そろそろ来るころだとおもってお待ちしておりました」
突然声がした
ガサゴソとたくさんの洋服箪笥の中から出てきたのは
1匹のハリネズミでした。
「やあ、ハリー。元気にしていたかい?」
チェシャ猫は知り合いみたいだ
「あぁ・・おかげさま・・で!」
ハリーと呼ばれたハリネズミは
縫い針をチェシャ猫に向かって投げた
「!?!?!?」
パニックになる愛里子をよそに
チェシャ猫は軽々とかわしていた
愛里子は何がなんだか
思考回路が追いつかず
しゃがみこんでしまった
『二人ともおやめなさい、アリスが怯えているじゃない』
どこからか女性の声がした
ピタリと止まる二人
『大丈夫ですか?』
「あ、ありがとうございます」
そこにはとても美しくどこか寂しげな表情の女性が立っていた。