rkrn

□私の背中についてこい
1ページ/1ページ



走り出した私のまわりには気付けば誰もいなくって
追いかけてくれる人もいなくて


私はいつも一人だった


でも
今は違う


「七松先ぱーい」


幼さの残る声に振り向いては微笑んだ


「お、お待ちください七松先輩!!」


私の後ろにはいつだって…

「この平滝夜叉丸目上の方には最大の配慮と思っておりましたが先輩のみにあまる暴挙の数々もう我慢の限界です!!一言言わせていただきます!!」


自慢の髪も顔も普段とは比べられないほど汚れそれでも下級生を心配し手を引きながら私を睨む滝夜叉丸が

「滝夜叉丸先輩〜無駄ですよ七松先輩が滝夜叉丸先輩の言うことなんか聞くわけないです」
「なんだと三之助!!ああこら縄を放すんじゃない!!」

その滝夜叉丸に手をを引かれているのにも関わらず真逆の方向に走り出そうとしている三之助が



「先輩、四郎兵衛が死にそうです」
「ああっ四郎兵衛しっかりしろ!」


三之助の肩におぶさりすでに意識のない四郎兵衛が


「うぅ滝夜叉丸先輩〜まだ走るんですかぁ?」
「大丈夫か金吾お前もよく頑張ったな」
「はい」


涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら滝夜叉丸に頭を撫でられ照れたように笑う金吾がいる


私はこの子たちがいとおしくてしかたがない


「遅いぞお前達!」
「だから!私の話を!」
「お、桜の木だでかいなぁ」
「七松先輩!」
「でもまだ蕾もないなぁ花見は無理かぁ」
「ほらあの人は話なんか聞きませんよ」
「あぁもう!七松先輩!私たちをなんだと思ってらっしゃるのですか私たちは…」
「ん?なんだ?私はお前たちが大好きだぞ!!」
「今は好きだとか嫌いだなんてそんなことをいっているのでは…」
「僕も皆大好きです!!」


滝夜叉丸の言葉を遮って金吾がそう言えば



「僕も…」


ヘロヘロと四郎兵衛までもが三之助の背から声をかけたすると三之助もなんだか嬉しそうに微笑んで


「俺も嫌いじゃないです」
「三之助…お前まで」
「滝夜叉丸先輩は?」
「……私だって」
「はい?」


呆れたようにため息をついてうつむく滝夜叉丸に三之助がからかうように尋ねると滝夜叉丸はやけくそに叫んだ


「私だって大好きだと言ったんだ馬鹿者!」
「なにも怒んなくても」
「よかったぁ」


嬉しそうに笑いあう四郎兵衛と金吾
四郎兵衛もいつの間にか三之助の背から降りていた


「…七松先輩!!」
「おっなんだ?」
「聞いた通りですこの滝夜叉丸も三之助も四郎兵衛も金吾も貴方をお慕いしているのですから今後大好きな私たちに無茶をお言いになるのはやめてください!!先輩はお一人で走っているのではないんですからね」
「!」
「わかりましたね!!」
「ああわかったぞ!」


ふてくされてなのか照れたのか顔を真っ赤にした滝夜叉丸ににっこり笑って一人一人の頭を撫でていく最後に四郎兵衛と金吾の汚れた忍装束をパンパンと叩いて叫ぶ


「じゃあ今日は帰るぞ!!忍術学園までランニングだ!」
「えぇ!!?」
「そんな無理言わないでくださいよ先輩!!」
「私はまだまだ平気だぞ!」
「先輩の平気は人間の無理」
「私の話を本当に聞いていたんですか貴方は!あっお待ちください!!」
「いけいけどんどーん!!」


文句を無視して走り出す


「…あーはいはい、いけいけどんどーん!!」
「いけいけどんどーん!!」


ため息まじりに叫んだ滝夜叉丸に続いて叫ぶ3人に私はうつむき笑う



「でも本当に大きな木でしたね」
「そうだな」
「春がきたら皆でお花見に行きましょうよ」
「あぁいいな」



行きよりも遥かに楽しそうに走る四郎兵衛と金吾に滝夜叉丸も笑顔を浮かべて走った



「皆が迷子にならないならついてきてあげますよ」
「三之助おまえなぁ」
「あはは」




春がきたら



その言葉の意味を知らぬ程三之助も滝夜叉丸も

もう幼くはないだろうに


「七松先輩も一緒にですよね」
「当然ですよ」
「七松先輩も一緒です」
「ねっ」



声を揃えて眩し過ぎる笑顔を浮かべる


一緒になんて無理に決まってる春がきてあの桜が咲く頃には私はもう忍術学園にはいないのだから


わかりきっているのに


「楽しみだな!」
「はい」


それでも頷いてこの子たちの前を走り続けるのは


あと少し
あと少しだけと思ってしまうから


あとどれだけこの子たちといれるだろう


あとどれだけこの子たちはこの幸せの中にいれるだろう


そう思ったら



答えなんか簡単に出て



涙が止まらなくなってしまったんだ






.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ