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□馬鹿の話
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「もんじろー!」


なんだかやけに楽しげな奴の声に振り向いてみたら温かく柔らかな感触が唇に…。


「…は?」


間抜けにも大口を開けて呆けていると目の前には奴の綺麗な顔があった。


「仙蔵?」


奴は一歩下がって満足げに笑った。
それから何をするでもなくただただニコニコと笑って何かを期待するような笑みで俺を見つめる。
何がしたいんだこいつは。

「…仙蔵、一つ言っておくがおれに口吸いをしたところで食べ物はでてこないぞ?」


いつか小鳥が親鳥の口に顔を突っ込んで餌を貰っていたことを思いだして俺が言うと


「…は?」


今度は仙蔵が呆けた顔をして首を傾げた。
そしてふるふると肩を揺らしカッと頬を赤くしたと思ったら今度は腹に強い衝撃を受けた。なんでか俺が殴られたらしい。


「ってぇな!何すんだっ!」

怒鳴ったら仙蔵は俺の腹をさらにドスドス殴りながら俺の肩に額をよせた。
その肩はまだゆれていてなんだ泣いているのか泣きたいのは俺のほうだと思っていたら


「っ…くっくくっ…ははっ」


仙蔵は笑っていた。


「あはははっ」
「な、なんだよ?」


怒っていたのかと思えば笑いだして百面相な仙蔵。
なんだなんだよ意味がわかんねぇ。すると仙蔵は目に涙をためて言った。


「はっはははっばかだなぁ文次郎は」
「なにぃ?」


ばかとはなんだ失礼なやつだ。
そう文句をいってやろうとしたらまたも唇にあの感触が。俺は再び仙蔵に唇を塞がれていた。


「好きな人とは口吸いをするんだ」


閉じていた目をゆっくり開いてにっと笑う仙蔵。


「ひとつ大人になったなばか文次郎」


そう言って顔を真っ赤にさせている仙蔵に怒る気なんてなくなっていた。



好きな奴とは口吸い?
なら俺にするのは間違っているだろ
お前のほうがばかだ。



そう言った俺の顔も奴に負けず劣らず赤かったに違いない。








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