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□過ちに気付いて
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「あの頭でっかちな知ったかぶり女に、穢れた血めって、僕そう言ってやったんですよ」


ドラコ・マルフォイが父親譲りの自分が世界一正しいといった口調で言ったのを聞いた瞬間、嫌な汗が流れた。そしてハーマイオニー・グレンジャーの蒼白な顔がすぐに頭に浮かんで消えた。


「あの女、きっと意味もわからなかったと思いますよ、だってあの連中は」


ああ、この憐れで愚かな子は、自分の過ちに気付いていない。
そのたった一言が自分と彼女の決定的な決別になろうとは思いもしないのだろう。


「そしたら、あの、魔法界の面汚しが」
「……愚かなことよ」


思いもよらずそんな言葉が自身の口から漏れた。


「そう思われるでしょう?そうなんですよ、まったく救いようのないバカですよ、あいつ
杖を買い換える金がないからってボロ杖のまま…」



わかっているだろうに。
あの小娘がいかに優れているか。たとえ言葉の意味はわからずともその表情、声音、周りの空気でその言葉がどんなに侮蔑的であるか彼女にわからないはずがない。


「ドラコ」
「はい?」


我輩を見上げた瞳のなんて澄んだことだろうか。この子は本当に憐れだ。
清らかな心を父親の愚かな教えが汚していることにも気付いていない。


「友達は選べと父上から教わったのだろう?」
「はいっ、だから僕は選びましたよ!間違ったってポッターやウィーズリーなんか選びません。ましてやグレンジャーなんか」
「そうか」
「…先生?」


今自分は眉間に皺を寄せているのか微笑んでいるのか本当に微妙な顔をしているだろう。


そう、お前は選んだ。
そして、何も手にすることは出来なかったのだ。


差し出された手を振り払った。
「穢れた血」と罵った。


たったそれだけのことで自分の犯した大きな過ちに気付かないままそれは崩れていく。


もう、その手を握り返すことは出来ない。
もう、彼女が振り返り自分の目を見つめることはない。


「先生?どうされたのですか?」「ああ」


お前が求め望んだものはもう、何も手に入らない。
もう、全て…


「スネイプ先生?」
「君は何が欲しかったのかね」
「え?」


忘れてはいけない。
いつか己の選択をきっと後悔する。


「気を付けたまえ」


どこかの憐れな男と同じ道を辿らないように。


どうか、どうか、


「気をつける?何をですか」
「それは自分で考えたまえ」







過ちに気付いて

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