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□いつもの冗談
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不思議な気分だった。今まで、何があっても自分たちは一緒だと思っていたから。



「俺だったら良かったのに」



包帯に巻かれた痛々しい傷にそっと口付け呟く。
気配を感じたのか先程まで寝息を立てていたジョージがぼんやりと微笑んだ。


「フレッドじゃなくて良かった」
「…ジョージ」


ジョージは目を擦って上体を起こした。



「調子はどうだ?」
「絶好調」


なんて、痛くてしかたないんだけど。でも、それ以上に震えてた。



「なぁ笑うなよ?」
「うん」
「俺、怖かった。もう死んじゃうんだって思って、そしたらもうフレッドと馬鹿も出来なくなってママに怒鳴られなくなって…とにかく怖かった」
「うん」
「覚悟も出来てるハズだったのに、あぁ情けねぇなって思った」
「ははっ」
「…笑うなよ、最初に言っただろ」



むくれてフレッドを睨む。フレッドは笑いながらジョージの肩を叩いた。



「いやだってお前があんまり普通のことで真面目に悩んでるからさ」
「…」
「あの、マッドアイでさえやられたんだぞ?怖くないやつがいるかよ、ほらジョージ、見ろよ」


杖の先をくるっと回すと小さな火花が散ってピエロの蝋人形が現れる。


フレッドがもう一度杖を降るとピエロは舌を出してバカにしたように笑って帽子から玉乗りの玉を出した。バランスを取りながらその上に飛び乗るピエロ。

机の上を行ったり来たりしながらおどけていると火のわっかが浮かびあがる。ピエロはわざとらしくおどろきながらそのまま火の輪に突っ込んで鮮やかな色の洋服の端を燃やしまた慌て行ったり来たりした。


「ははっ」


ジョージを笑い声をあげるのをフレッドは横目にみて微笑む。

ピエロはようやく帽子から水を出して火を消した。
ところがそれは金魚鉢の水でピエロはくちにくわえた金魚をぺっと吐き出してうえーと顔をしかめた。
小さな金魚が机の上の水溜まりをピチャッとはねる。

「馬鹿だなぁ」


ジョージが言うとピエロはまたおどけてみせて今度は帽子から先に星のかざりがついた杖を取り出した。ピエロが杖をひとふりすると金魚は跳ねて弾けると花火になってWの文字を描いた。

「…あ」


ピエロはわざとらしく一礼してパンッと音をたてて宙に消えた。


「www永遠なれだ」
「…ああ」





「ねぇ僕はこう思うよ」
「ん?」
「僕で良かった、君じゃなくて良かったって笑うよ」



たとえ、死んでも。
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