HP

□最高の
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※フレッドの死後といった感じの話ですので苦手な方はご注意ください。
少しでも楽しんで頂けましたら幸いです。













「おめでとう」
「ありがとうママ」
「おめでとう」
「ありがとうパパ」
「おめでとう」
「ありがとうロン」
「おめでとう!」
「ありがとうジニー」


ビルとチャーリーからも手紙が届いた。


「おめでとう、ジョージ」


毎年楽しみにしていた幸せなこの日。プレゼントにケーキに、ママの手料理、家族からの祝福の言葉。いつもいつも二倍のばか騒ぎ。

けれど今年は僕だけに向けられた一人分の「おめでとう」。


フレッド、お前が死んでからはじめての誕生日がやってきた。

お前がいなくなってから僕はわりと元気に過ごしているよ。
そりゃあ周りの皆がびっくりするくらいにね。

だってメソメソしてたらカッコ悪いじゃないか。それにそんなのは僕達らしくない。
だから、天国でお前を驚かせるとっておきのいたずらとお前を爆笑させるとっておきのおもしろ話を探して、毎日楽しく生きることに決めたんだ。


そうして今日まで生きてきた。でも、今日はダメかもしれない。
だって今朝一番に「おめでとう」をくれたママが僕の顔を見て泣きそうな顔をしたんだ。

「おめでとう、ジョージ」

ママは今年も手編みのセーターをくれた。


「ありがとう、ママ」
「今年は一人分ですんで楽だったわ」


そう言ってママは笑っていたけどすぐにキッチンに走って行ってしまった。

「おはよう」
「おはようパース」
「……ママは?」
「キッチン」
「そうか」

それからすぐにすすり泣く声が聞こえてきて、僕はあの後すぐにパーシーが起きてこなかったら泣いていたかもしれない。

鏡に映った顔を見て僕はほっとした。泣きそうなこの情けない顔は、お前ではなく確かに僕のものだ。だって耳がないからね。

でもきっと、僕の顔がママを泣かせたんだ。

もし僕にきっちり耳があったなら、今日うっかりママは僕とお前を見間違えることが出来たかもしれないのに。なのにやっぱりお前は帰ってはこないんだ。


「あーあ」


僕達に似合わないため息をうっかり吐いてしまってから
そういえば、まだパーシーから誕生日プレゼントをもらっていないことを思い出した。


「パースが僕達に何をくれるか賭けないか?」


お前は誕生日の度にそう言いだして


「オーケー、ホグワーツの教科書、おさがりのね」


僕が言うとお前は違うなと笑うんだ。


「羊皮紙の切れ端だな」

わざと聞こえるように2人してばか騒ぎしているとパーシーが顔を真っ赤にして僕達を怒鳴るんだ。

「ジョージ!」
「……あ、な、なんだい?パース」
「独り言はやめろ」


僕は本当にパースに怒鳴られていた。


「それに、僕はお前たちの誕生日に羊皮紙の切れ端なんてやったことはないぞ」
「ははっ、そうだったかな?」


そうだ。だってパースが僕達の誕生日を祝ってくれたことなんてなかった。僕達はいつだってパースにとっては恥知らずな弟だったから。
パースはちょっと無言で僕を睨んでそれから2つの包みを僕の胸に押しつけた。


「渡せなかったプレゼントが沢山あるんだ」
「え」
「お前達に」


驚いた、パースが泣いていた。


「フレッドにはもう…渡せないから…お前に」
「パーシー…」
「お前に二人分のおめでとうを言ってもいいだろうか」
「……ははっ」



オーケー、と僕は笑った。



「何を笑っているんだ」
「別に」



ありがとう、パーシー。



「ねぇ、杖を貸して」
「え…ああって、おい、ジョージ!」



僕は庭に駆け出してパーシーの泣き顔花火を空に打ち上げた。
パーシーは顔を真っ赤にして怒鳴っている。


「どうだい、見えるかい?フレッド」


誕生日おめでとう!


僕は叫んだ。そう思ったのにパーシーの声が重なった。聞いたことのない優しい大声、僕は振り返った。はじめて見た、パーシーの笑顔。



「おめでとう!ジョージ」
「……ありがとう、パーシー」
「おめでとう!フレッド!」


パーシーは空に向かって叫んだ。僕も続けて叫んだ。
涙と笑いが止まらなかった。



「おめでとう、フレッド」


お前に天国で話すとっておきができたよ。




パーシーのプレゼントはびっくりするほどイカしてるってね。






END

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