響想録

□02
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人が嫌いなあたしにとって、この世界は眩しすぎる。
だけど、そんなあたしにみんなは手を差し伸べてくれたから
あたしはあたしでいられるような気がする



想録02










「あとは、屋上だけか・・・・・・・・・・。」



屋上周辺を探していた斎藤は、屋上に続く階段を上りドアをゆっくりと開けた



「・・・・・・・・・・。」



斎藤は屋上の隅々を見渡し、影の方にフードをして隠れる霖の姿を見つけた。
そっと近付き、霖の前にしゃがんだ。





「何故、逃げたのだ?」

『………っ、視線が……怖かった…………からっ…………』





顔を上げた霖の目からは、涙が溢れていた。





『……あたし、こういう、の、慣れて、ないから………昔の事、思いだしてしまって』

「何かあったのか?」

『・・・・・・・・・・っ、』

「理由は聞かぬ。だが、雪村たちは心配していた。」

『………すみません』

「自信を持て、怖じける必要はない」





俺は、また顔を俯かせた伊月に手を差し出した。





『・・・・・・・・?』

「・・・雪村たちが待っている。」

『あ、あの・・・、』

「なんだ?」

『名前・・・・・。』

「俺は、斎藤一だ」

『斎藤さん、えと、め、迷惑を掛けてすみませんでした。』



しどろもどろに言う霖の姿がおかしく、斎藤は顔を緩ませた。





『・・・・さ、斎藤さんの手は、剣士みたいな手ですね。
部活は、何してるんですか?』

「剣道部だが・・・・・・・・・・。」

『剣道部ですか。・・・・あたしも、小さい時やってました』

「・・・永倉先生にやった峰打ちの姿勢は、綺麗だった。」





斎藤の言葉に霖は頬を染めた





「ほら、行くぞ」

『あ、はいっ!』
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