響想録

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あたしはただの“空気”です
なーんて言うのもウソですが
無謀な事をやって楽しむのがあたし。
そりゃぁ、ベランダから飛び降りるのだって大好きだからね。
高いとこ好きだし


想録13-後編-







『で、結局また最初の出たしに戻って千鶴達に追い掛けられるという。
なんというデジャヴ
なんというドS!!←』





良いところに隠れたかと思ったが、総司の勘の鋭さによって結局4人に追い掛けられる始末







「霖ちゃん、いい加減剣道部入ってよ」


『待て待て、あたしは土方先生に勝って仮部員でいいって言ったよ
今更何言ってんの』


「理事長が“霖くんを是非、剣道部に入れたい”って言ってたらしいからな」


『どういう風の吹き回しですかソレ』


「特別な存在なんじゃない?」


『・・・・・・・特別な存在ね』








黙りこくった霖は、顔を上げた







『特別な存在ってあたし、“特別”でも何でもないよただの“存在”だけだし』


「霖ちゃん・・・・・・」


「霖?」


辛そうに話す霖に違和感を抱いたかのように、千鶴は立ち止まった


『・・・・なーんて考えてみたりするんだよね(′゜З゜`)』


「霖、今マジでビビったぞ」


『へぇ、平助でもヒビんだ。なんか笑える』


「心配してんだよ!」


『心配って何?
心配されるような事は言ってないよあたし』








あたしは、無理に笑った。
あたしは“特別”じゃない“異常”なんだと
適当に、言葉を並べながらあたしは逃げた









『何奴』


「霖、見つけたぞ」


『わぁー、顔が鬼になってますよ土方先生』








千鶴達から逃げているのがやっとなのに
よりにもよって、またしつこそうな本物の鬼に遭遇してしまった
ヤベぇ、本当に鬼に喰われる









「誰がしつこそうな本物の鬼だぁ?」


『あれ?口にも出してないはずなのに何故』


「お前のは口に出てんだよ」


『へー、じゃあ気を付けてまーす』


「棒読みか」


『元からです』








そう言いながら追い掛けてくる土方先生は、総司と平助を使って挟み撃ちの指示をした
ついでに、3棟の3階にある音楽室に近い

あ、これ完全捕まる
ん、どうしようかな


考える間もなく音楽室に逃げ込んだあたしは、正面のドアと横にあるドアに立ってる土方先生達を見た










「霖ちゃん、大人しく捕まりなよ」
『やなこった』


「霖!入ってくr『断る』って最後まで聞けよ!」


「霖、もう逃げられねぇぞ」







迫りよってくる3人に後退りしながら、霖は窓の方に寄っていった






『っ・・・・・・。えー、だって先生、
先生と試合したときあたし先生に言いましたよね?“仮部員でって”男に二言はないって』


「だが今回は違うからな」


『マジか・・・・・・・・・・・・?』








ふと窓の外を見ると、
山南先生が手を広げてにっこりと笑って霖にアイコンタクトを送っていた
気持ち、
笑って手を広げながら待っているっていうのが若干気持ち悪いが・・・こんなことは誰にも言えない。











『目的の為には手段を選ばない!!』


「「「!!!?」」」










あたしは、山南先生を信じてベランダから飛び降りた









「「霖!!?」」


「「霖ちゃん!?」」











唖然としながら慌てる土方先生と総司たち

ふわりと宙に浮かぶ感触を味わった霖。山南は飛び降りてきた霖を抱き止めた









『信じてました山南先生』


「貴女はまた何をやらかしたんですか・・・・・?」








山南は呆れた目を霖に向けていた









『いやいやいや、やらかしたも何もあたし剣道部の仮部員でいいって土方先生と約束しましたし
もとより、テスト終わってさぁ帰ろう!
とした瞬間に剣道部と、先生に力を貸す左之先生と新八っつぁん、薫くんに追い掛けられましたもん。
あたしは無罪です。入るか入らないかは個人の自由であって、日本国憲法第何条かは忘れたけどそんな簡単なものに縛られる義務はないです!』


「土方くん、霖さんの言う通りです。」


「だがな、山南さん」











言い返そうとした土方は山南によって遮られた








「その誘いは学園長が霖さんに伝えたいだけじゃありませんか?
なぜ貴方たちは霖さんの気持ちを分かろうとしないのですか?」


「気持ち・・・・・・?」


「気持ちって何霖ちゃん・・・・・・?」







視線を向けられた霖は冷や汗掻きながら答えた






『えっとまぁ・・・・・、正直入りたいのはやまやまで・・・・、一応仮部員になってるけども
あたし一応、一人暮らしだから、自給自足で家をなんとかして頑張ってんだよ。
もちろん大変な目にあってる千鶴のお手伝いをしてあげないといけないってのは頭でわかっているけどさ、
一人でやっていくにはお金がたくさんいるっしょ


まだ、お母さんたちの保険とか通帳はまだたくさん残ってるけど、あまり無駄に使いたくないんだ

あたしに親は居ないし、みんなみたいに親がお金を出してみんなを学校に行かせてるけど
あたしは自分で働いて学校のお金も自分で出してる。

てか、お金を得るための毎日が忙しいんだよな
ついでに、今日もバイトだったけどね;;;』


「え、霖ちゃん・・・・・じゃぁ」


『気にしないで千鶴、これは自分が望んだことだし
もっとも、自分が好きでやってる事だから。

今までずっと近藤さんにはたくさんお世話になってたから、今がせめてものお礼だと思って』






ニコっと笑うと土方と総司、平助、千鶴は、霖に頭を下げた


「霖すまねぇな」


「「ごめんね霖ちゃん」」


「・・・・・ごめん」


『いやいやいや、頭上げて下さいよ。
先生と総司たちは関係ないですし。あたしの中途半端がいけないんですから

・・・・でも、“正式”にと誘ってくれたのは嬉しかったから。ありがとう』









霖は3階にいる4人に礼を告げた










「あ!霖ちゃん見つけたぞ!!」


「霖!!」


「霖、騙したね」


「霖、石田散薬は・・・・・・」


『わぁーお、いい雰囲気がぶち壊し』











いいムードになったとたん、息を荒げながらやってきた4人はあたしを見るなり固まってしまった









「さ、山南さん・・・・・・・?」


『あ、新八っつぁん勘違いするなよ。
あたしがあの音楽室から飛び降りた時に抱き止めてくれただけだからね』


「(俺の)霖を離せ」


「いくら保健医でも許さないよ」


「山南先生、霖を離してください」


『ちょっ、ちょっと待って!薫くん!一!左之先生!
これ、誤解だからね!?
てか、ちゃんて話聞けよ!!』










山南先生に殺意剥き出しの3人を慌てて止め、話を聞いていなかった3人に苛立ち一発お見舞いした








『まぁ、しょーがないなー』


「「「「「「「「「・・・・・・・・・・??」」」」」」」」」」


『正式に剣道部入ってやる。
ついでに、千鶴のマネの手伝いもするからね』


「「「「「「「「「!!!!!!!!!?」」」」」」」」」


「い、いいのか・・・・?」


『じゃぁ、前言撤回しようか』


「い、いや駄目だ!!」


『ウソペロッ(・ω<)』







結局あたしは、正式に剣道部へ入部した

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