影、そんなに薄いですか。

□P.2
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――『昼休みまであと10分です。貸し出しする人は早めに来てください』―――








委員会の決まり文句を言えば、ガラガラだったカウンターの前には本を借りる人だらけ

小説に漫画、雑誌に専門教科教材、歴史も古典もあれば世界の童話や発句集
ジャンルは違えど、本は本である

今日も多いなー、と作業しながら見ているといつの間にか最後尾



「あ、きよら先輩!」
『また君は・・・・・・、なんであんパン喰いながら並んでいるの。
ここは飲食禁止の場だよ』



声を掛けてきたのは、あんパンの常連
・・・・・・もとい、よく本を借りに食べにくる井吹龍之介だ

図書室で食べさせる代わりに、
彼はこの意外とハードであるカウンター係をとても手伝ってくれいるので食べることを許可している
意外と素直でいい子だ



『今日は何を借りに?』
「先輩が教えてくれたシェイクスピア全集をな!」



―――シェイクスピア全集、

それは私が愛読している作品の中の一つであり、その作品を書いた作家である
今では歌舞伎や映画になるほど有名である
彼はさっそく読んでくれるそうだ。

私が彼に全集を勧めた理由は至って簡単、彼は感受性が強い、ということからこの本を勧めたのである
彼なら多分読んでて意味が分かるはずだ・・・・・・・・・。



『結構難しそうだろう?』
「あぁ、難しいと思うけど頑張るよ」



うん、素直な子だ
なかなかこういう素直な子がいる事にびっくりした、しかもこの学園に限って



「そういえばさ、入荷本の整理はいつするんだ?」
『それがさ、先生達が忙しいみたいで注文ができないし、新しい本もまだ届いてないんだ』



そう答えると龍之介は、そうか・・・・・・。と残念そうに呟いた



「・・・・・・あー、そういや先生達が忙しいのって生徒会長の突然の放送で、
とある発案の準備してたな・・・・・・・・・・・・。」
『発案?』
「知らないんですか?」
『知らない。修復室に閉じ籠って本を読んでた』



龍之介は、じゃあ・・・・・・。と言いながら放送された

とある発案の内容を私に教えてくれた


内容を聞いたあと、何故か溜め息をついたのは言うまでもない
何を考えてるんだあの生徒会長は



「雪村から拒否されっぱなしらしいし」
『雪村さんを知らないけど可哀想だ』



そう答えると龍之介は、え?と言って私の顔を見る



「・・・・・え、きよら先輩雪村知らないのか?」
『興味ない、でも今年入ってきた女の子、としか知らない』
「じゃあ今度!『必要ない』・・・・。」



キーンコーンカーンコーン

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る



『ほら、チャイム』



そう促すが、



「まだ、嫌なのか・・・・・?」
『どうだろうね』



龍之介は何も言わずに本を持って図書室を出て行った
彼のそういうところも素直なんだな






素直
(彼の素直は何も言わないから良い)
(まだ、嫌なのか・・・・・。)
(嫌だからこそ、こうなった)
(逃げるなよ・・・・・!)


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