影、そんなに薄いですか。

□P.3
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『・・・・・・・はぁ』



最近、貸し出した本が戻ってこなくなった
所謂、延滞本だ




この薄桜学園、図書室の利用のルールは
・借りられる本は五冊まで
・二週間以内に返却




だが、ルールである
“二週間以内に返却”を守らない奴がこの学園にいる
大抵は放送したあと必ず返ってくるが、それでもかと言うくらい返してこない人もいる


特にこの学園にいる、とある教師Nだ


だからその時は半ば強制的に脅しをかけている
多分脅しの範囲を越えてると思う



今は本の回収のために学園内を彷徨っている
まずは私のクラス、2年2組 斎藤 一



教室に辿り着くと、古典の授業があったのか斎藤くんは土方先生と話していた
そういえば土方先生・・・・・、俳句の本を2・3冊借りてたな



『斎藤くん、土方先生』
「結城かどうした?」



土方先生はあたしを見ながら答えた
斎藤くんはびっくりしたように私を見ている



『本回収、早く出して』
「あ、あぁ」
『斎藤くんも借りてる本あるでしょ、出して』
「あ、あぁ」



斎藤くんがまじまじと私を見ている



『なに、私を初めて見た?』
「い、いや・・・・。」
『早く本出して、整理できない』
「あ、あぁ」
「結城、いい加減に」
『はいはい説教も程々にね先生』



斎藤くんから本を預かり、すぐに回収バッグに入れた



『あとで職員室寄るから』



土方先生にそう言って教室を出た
次は多分食堂にいると思う源さん



『源さん』
「おや、きよらちゃんか。
珍しいねここに来るなんて」



食堂に行くと、ちょうど昼御飯の準備をしている源さんがいた

源さんにはある意味お世話になっている
特に、傷んだ本の修復をしてる時や私が本に夢中で引き籠っている時に
いつもご飯を持ってきてくれている



「今日はどうしたんだい?」
『本、源さん借りてたでしょ。その回収』



源さんは「そうだった、そうだった」と言いながら机の引き出しから本を取り出した



「おかげで役に立ったよ」
『源さんの作る料理、美味しいもんね』
「ははっ、そう言ってくれると嬉しいね。
きよらちゃんも無理をしちゃいけないよ、休憩も必要だからね」



本を受け取ると源さんは、またおいで。とニコニコ笑っていた
源さんの笑った顔を見ると、何故か嬉しくなる



『さ、次々』



あと残り9冊・・・・・・。と呟きながら本を回収しに向かった




















××××××××××××××







あと残り4冊
最後は土方先生とあの延滞者常連がいる職員室に向かった



コンコンコン



『失礼しm「だぁぁああ!学校で競馬実況聴いてんじゃねぇぇええ!!」・・・・・。』



職員室に入る決まり文句を言おうとしたところで、私の決まり文句は土方先生の怒号によって遮られた



「だってよ〜、この本に“これを読めば運もつく!”って書いてあるんだぜ!」



延滞者常連の永倉先生が土方先生に図書室から借りている本を前に突き出していた
左之先生は呆れた目で永倉先生を見ている



「新八、お前その本パラパラして見てただけじゃねーか」
『本の内容が全て正しい訳じゃない。大体その本は、書いた人が体験した

出来事や考え、実行した行動、結果を経験して成功した結果が書いてあるだけのハウツー本。
運は、自分自身が作るものなんだから』
「だから、全部読んでから運を使いやがれ!」



永倉先生はしょんぼりとしていた
競馬ばかりに金を使うから金が無くなるんだ自業自得だ



「って、ちょっと待て・・・・。」
「「「なんでいるんだ!?」」」
『うるさいですね、そんな大きい声を出さなくても嫌でも聞こえてますよ』



私は耳に指を突っ込みながら答えた



『本を早く出してください、本棚の整理できませんから』
「ほらよ」



土方先生はすんなり本を返してくれた。やっぱり俳句に関する本を借りてたか
あと2冊、問題はこれからである



『永倉先生?』
「お、おい、きよらちゃん、ま、待ってくれ・・・・・・!」
『待ちませんよ?』



私は後ずさる永倉先生を壁際に追い込み
黒い笑みを見せた



『今持っている本でもいいので返してください。
でないと本を金輪際貸しませんし、先生の給料半分を新作の本に使わせてもらいますよ』
「金輪際!?給料半減!?」
『えぇ、今から2ヶ月以内に借りた本を全部返してくれれば、それはチャラにします』



また黒い笑みを強化させ、私は永倉先生に詰め寄った



『それが嫌だったら返してください。まぁ、私は永倉先生の給料を半減させて、
新作の分の代金を出してもらいたいところですけど』



私は永倉先生から離れたあと、ドアの前で言った



『それに、私には何の害も残らないし、逆にこっちの身にもなってほしいものです』



嫌みを言って職員室を出た



「お、俺・・・・、明日から借りてた分、全部返す・・・・・・・・・・。」
「あ、あぁ、そうしとけ」
「おい新八、お前の魂抜けてってるぞ・・・・・・・・・・。」



この日を境に永倉先生は借りていた本を2ヶ月以内に全部返した






延滞本
(きよら、新八の奴全部返したか?)
(土方先生ですか、あの脅しが先生を行動させたんでしょうね)
(お前のは冗談に聞こえないからだよ)
(あのまま忘れて、給料の半分を新作分に欲しかったですが、少し脅し過ぎました)
(お前怖ぇな)
(どうも)



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