影、そんなに薄いですか。

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私が目にする光景は、本の整理をしているある女の子でした


その子は2メートルくらいある脚立を軽々と持ち上げ、そして登り届かない所の本棚を整理していた
しかも、この高くて広い図書室を全部一人で整理しているなんて、私は開いた口が塞がらなかった

彼女はきつくないのだろうか、辛くないのだろうか?
私が彼女の事を思ったのは数時間前の事である










××××××××××××××


―数時間前の事



「千鶴!俺、ちょっと図書室行ってくる!」
「うん!」



事の始まりは、平助くんが最近よく図書室に行く事から始まった
最初は赤点補習の勉強かなって思ってたけど、
楽しそうに笑う平助くんを見てちょっと気になり、後を追ってみた


追ってみればそこは広大な図書室で



「・・・・・・・・・・。」



椅子に座って、百面相しながら補習を解いている平助くんと白衣を着た女の子が対面していた



『赤点取るのもi「いい加減にだろ!」わかってるじゃないか』



女の子は手に嵌めていた白い手袋を取り、白衣を翻弄させながら平助くんの前に仁王立ちをしている
その威圧感でか、平助くんは吹っ切れたように問題を解き始めた



『ゲームばかりしてるから赤点取るんだ』
『いい加減覚えろ』
『漢字を100文字書かせて漢字しか書けなくするぞ』



など嫌味と脅しの混じった言葉を吐いていた
その後ろ姿は、私の背と同じくらいの彼女が一段と大きく見えた
しばらく見ていると・・・・。



『・・・・ん、君は1年の雪村さんだっけ?初めまして、私は結城きよらです』



視線に気付かれ、さりげなく自己紹介をしていた



「は、初めまして・・・、雪村千鶴です!」
『そんな堅くならなくてもいいよ、1歳しか年変わらないし』



結城きよら先輩・・・・・・。
顔を見た途端、私は叫びそうになりました
なぜなら、きよら先輩は予想以上に美人さんなんです!!


きよら先輩はへにゃりと笑いながら『突っ立ってないで座ったら?』と椅子を引いて席を開けてくれました



『左之先生から聞いたよ雪村さんの事』
「原田先生が?!」
『他の先生達からもね。後は、風の噂かな。でもなかなか雪村さんに会う機会が無かったしね』
「なかなかって、きよら、影が薄いからだろ・・・・・・・・・・。」
『否定はしないよ事実だからね、口よりも手を動かせ』



叱咤された平助くんは呆れながらも問題を解き始めた



『平助から雪村さんは幼馴染みと聞いた、なにか苦労等あった?』
「まぁ・・・はい。」
『苦労掛けたね、どうもこいつの頭ん中に入ってんのはゲームの事だからね』



苦笑しながらきよら先輩は平助を見た
そこでふと、疑問が湧き質問をした



「きよら先輩も平助くんの幼馴染みなんですか?」
『小学校から今まで、偶然的に同じ学校』
「俺の場合、気づいたのは小6と中3の3学期と高1の2学期だったし」
「え!?」



可笑しいだろ?と笑う平助くんを見たあときよら先輩を見た
きよら先輩はいつもの無頓着な顔になっている



『小1から6まで同じクラスで、こいつが赤点取り始めた事から今まで幼馴染みだ。
それで中学も偶然的に同じ学校で、またもや高校も同じだ』
「俺の場合、剣道でここ入れたし」
『唯一お前が赤点を取らないのは剣道だけだったからね』
「きよら先輩も推薦だったんですか?」
「それ、俺も気になった!どうやって入ったんだ!?」



ジリジリと寄ってくる二人に対してきよらは平然としていた



『秘密』
「え!?」
『それは先生達に聞いてごらん、私が元々ここに入学する事自体、先生達は反対していたんだから』
「なんで!?」



きよら先輩は『知らん』と言いながら2階へ行ってしまい、ロビーには私と平助くんだけが残された


その時私は、哀しそうな顔をしていたきよら先輩を一瞬も見逃さなかった




秘密

(きよら・・・・・・。)
(平助くん、)
(わかってる・・・・!!けど・・・、)
(踏み入っちゃ行けない事なんだよね・・・。)
(あぁ・・・・・・・・・・。)


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