影、そんなに薄いですか。

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『梅の花、一輪咲いても梅はうめ』



・・・・・・・・・・。
・・・なんだろう、この句のセンスの無さ
特にこの句、ダジャレ?

意味が何となくわかるような気がするけど、ちょっとダジャレっぽい



『これでも古典の先生なのか・・・・・?』と一瞬疑ってしまう



いい句は少しあったけど、読み取れるに雪村さんの事だろう
意外とむっつりだなー



『春の草、五色までは覚えけり』



これは意味が解らない
でもまぁ、読んでるだけで面白いからしょうがないのだが


ふと最後に近い項を見るとどうやら先生は、句が思い付くたびに書いているらしい



『変な趣味してるなぁ』



私は苦笑しながら続きを読み始めた














×××××××××××××××



『ハハッ!!変なのー』



ヘボいけど面白すぎて爆笑中
なんかこれ読んでると面白い、今までちゃんと笑ってなかったような気がする



『あの鬼教頭でもこんなの書くって意外だな』
「今の笑い声って君・・・・?」



続きを読もうとしたところで誰かに遮られた
声のした方を見るとそこには男が立っていた



『そうだけど、』
「僕は沖田総司」



沖田総司、
平助が話していた人間だろう



『知ってる、剣道部のエースでしょ』
「君素っ気ないね」
『よく言われるよ』
「ところでさ、土方先生の豊玉発句集って言うの知らない?」
『あぁ、これ』



きよらは持っていた豊玉発句集を沖田に見せた



『土方先生に返すの?だったらさ、土方先生に面白かったと伝えてください』
「君これ読んだの?」
『読みましたよ、ヘボい俳句でしたが最高でした』
「・・・・ッ!?」



カウンター席に座っていたはずのきよらの姿が沖田の目の前にいた



『あれ、もしかして私の存在とか知りませんでした?まぁ、どうでもいいんですけどね』



きよらは微笑みながら沖田に尋ねた



「君の存在は謎だったよ、ただ、廊下ですれ違う度にいつも白衣が目に入るし、振り返って見ても姿がないしね
君影薄いって言われない?」
『元から影薄いですよ、それに影が薄いのは自他共で認めてますし』



きよらは興味が無いように本を沖田の手に握らせたあと、沖田に背を向けた



「ねぇ、君の名前教えてよ」
『結城きよら』
「きよらちゃんね、またここに遊びに来ていい?」
『ここは本を読んだりする場所だから本借りる時だけ来なよ』
「えー」
『えーじゃない、ここは遊びの場じゃないから』



面倒臭そうに頭を掻いたあと振り返った



『いつでも来たらいいさ、その時はたくさんコキ使ってやる』



悪戯っぽく笑うと沖田は顔を赤くさせた
きよらはそれに気付かず本の整理を始めた



「・・・・・・・・・・。」
『いつまでいるつもり?もう下校時間過ぎてるよ、帰りなよ』



沖田は「わかった」と言いながら去っていった
去っていった沖田を見ていてふと、彼が近くにいた机に目をやる



『豊玉発句集忘れ、わざとか沖田?』



わざとなのか本当に忘れたのか机には豊玉発句集が置かれている



『届けるか』



面倒臭いがしょうがないと悟ったきよらだった






豊玉発句集捜索中2
(土方先生)
(((((((!?)))))))
(結城!?お前いつからそこに!!)
(5分も前にいましたけど)
(((((((・・・・・・。)))))))
(自分で認めてるんで、それよりほら先生の豊玉発句集)
(お前!!)
(面白かったですよ)
(・・・・・・・・・・。)


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