Noir-chai^ne

□Anneau――指輪
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 風弥の繊細なドラムに、

 真広の優しいメロディが重なる。

 忍の深い低いベースに、

 来夢のリズミカルな高いハモリと、

 仁の力強いメロディが合わさる。


 そして。

 彼方の甘く、美しい声が響く。



 ああ。

 なんて美しい。



 ファンを捕らえる魅惑の響き。

 鎖が見えるようだ。







 夢のような時も終わりを告げ、一度照明がおちる。

 一瞬の間の後、バッ、とライトがつく。

 白いライトは彼方だけを照らしていた。




「あれ・・・?」




 あれは彼方じゃない。

 遙だ。





「なんでハルなの?カナは??」





 メンバーも気付いていないと思う。

 彼方と遙は一卵性の双子だ。

 歌わないと見分けがつかない。(遙は音痴なの)


 見分けられるのなんて、本人たちと私くらい。





「今まで・・・たくさんの人に支えられて―――」





 遙は話しだす。

 私は不安になり、辺りを見回す。


 すると急に手首を掴まれた。

 一瞬びく、っと肩をすくめるけど、すぐに気付いた。


 冷たい指。

 少しカサカサしてる指先。

 大きい手の平。


 甘い痺れが私の手首から全身に広がる。


 そう。

 彼方の手。


 思わず勢いよく振り返る。

 ライブは!?とか聞きたいことはたくさんあったけど、

 人が多すぎて彼方の顔が見えない。(見えちゃったら騒ぎになるし)

 どうしようか・・・と思っていると、彼方は突然私の手首を引っぱって歩き出した。

 

 



 手首を引かれたままついていき、止まったのはライブ会場のすみっこ。

 彼方の長い足はやっぱり一歩の歩幅が大きくて、ついていくのに一苦労。

 2、30b歩いただけで、ゼェゼェ、と息があがる。



「カナ、な、なん、なの、」


 息も絶え絶えに私が言うと、彼方はようやくこちらを振り返った。

 
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