*Another-Future*

□強すぎる気持ち
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ルーンにとって、夜会なんて何の意味も持たないものだった。
例えそこでフィリエルに逢えようが逢えまいが、そんなこと今の彼にしてみれば逆効果とも言えた。

貴族たちの無意味な会話とその裏に潜む腹の探り合い。

―――傍にいるだけで息苦しくなる。

夜会の席から逃げるようにして月夜に照らされた庭先にでた。

ハイラグリオンからはまともに星の観察が出来ない。
夜になっても惜しむことなく使われる明かりの数々がハイラグリオンを照らし、結果その上で輝く星仙女王の象徴とも言えるであろう星々は霞んで見えなくなった。

覚悟はしていた。

フィリエルの一の騎士になると決意したその日から、今までの様な生活には戻れなくなるだろう、と。

例え研究を続けられたとしても、もう一度だってフィリエルと離れて生きる、なんて選択肢、ルーンの中に存在しなかった。

だからこんなこと、星が見れなくたってどうってことはなかった。

そう…そんなことが不満なんじゃないんだ。



どうして、

どうしてきみは…



「…ルーン?」



背後から聞こえた声で我に返った。



「ルーンったら、こんなところで何してるのよ。さ、中に入りましょう?」



室内から溢れる光を背中に受けながら、いつまでも変わらない笑顔でフィリエルは手を差し出した。

けれど、今のルーンにとってはそれすらも苛立ちに変わってしまう。



「…別に、僕がいる必要なんてないじゃないか」

「そんなことないわよ」



ルーンの卑屈な態度にフィリエルは即座に切り返し、まるで子どもみたいにぷぅっと頬を膨らませた。

一国の主になったというのに、無防備なのは変わらない――



「君にはユーシスがついているだろう」



――要は嫉妬だった。



夜会という晴れやかな舞台において、自分は余りにも馴染めていない。

まるで光を体現したかのようなフィリエルの隣に居れば尚更だった。

彼女の隣に似合うのは、そう―――ロウランド家の若君のような…




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