*Another-Future*
□予感
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「あ…」
「む、お前か」
「…なんか失礼です、その言い方」
寮から少し離れた場所にある風呂で一日の疲れを癒して出てくると、同じく風呂上がりの堂上にあった。
「教官はお一人なんですか?」
「誰かと風呂に入る趣味はないんでな」
―――いやいや、そんなこと聞いてないし。
「あ、そうなんですか。あたしは柴崎に置いてかれちゃって」
あははとまだ若干濡れている髪に手を伸ばした間抜けな笑い声をあげた。
「…あいつらしいな」
小さく微笑う堂上。
―――あれ、
ツ キ リ
―――なに…これ…
胸が、くるし、い。
きゅーってなって、息が苦しくて、それで…それで…
なんだか、泣きたい気分。
―――なんでだろう…?
堂上が柴崎の話をした。
ただ、それだけで。
なのに、哀しくて。
「…笠原?」
「――あ、はいっ」
「大丈夫か」
「?はい、大丈夫です」
「そうか、なら良い」
小さな嘘をついた郁に優しく微笑みかけ、その温かい手がふわっと頭に乗った。
ト ク ン
―――あれ…今度は、
なんだか身体が熱い。
お風呂あがりだから?
「…顔、赤いぞ。湯冷めすんなよ」
そう言って男子寮の方へと姿を消した堂上を、郁はただ黙って見つめていた。
(それが恋なんだと気付くには、もう少しかかりそう)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
貰い物。
堂上だってこんなんと変わんないよねー。