*Another-Future*

□聖なる夜に
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 くすんだ空から、雪が舞い始めた。
 もう12月も後半だというのに、昼間から太陽の光りで温まった地面のお陰で過ごしやすい一日だった。けれど日が落ちてしまえば気温が下がるのもまた早く、そこはやはり真冬なのだろう。道行く人達はコートの前を合わせて足早に帰路につく。
 店内からそれをぼんやりと眺めていた堂上は、52番の番号札でお待ちのお客様、という声に我にかえった。
 会計を済ませて品物を受け取る。手からぶら下がるビニールの中には箱に入った2種類のケーキ。郁が一度食べてみたいとテレビに向かって呟いていた店のものだ。
 コートのポケットに突っ込まれた左手の中には小さな箱が握られている。恋人に贈る、定番中の定番なこの箱の中身に、郁はどんな反応を見せてくれるのかと一人想像し、頬を弛ませながら歩く堂上であった。
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