*Another-Future*

□小さくたって女の子
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ジリリリリリリリリリリリリリ…



けたたましい電子音に堂上は眉を顰めた。
まだうつらうつらしている意識の中で音源に手を伸ばし、容赦無く叩き落とす。
リ…と最後に虚しく鳴いて、無機質なそれは使命を終えた。

もぞり、

体位を変えて布団の温もりにもう一眠りしようとした堂上だったが、それは叶わぬものとなる。



「あつしおにぃーちゃーんっ、あさだよーっ!!」



バァンと開け放たれた扉の向こうには小さな少女。
朝からテンションが高いのはこのぐらいの子供によく見受けられる傾向だ。



「…あと5分」

「だぁーめっ、またげんだのおじちゃんにおこられるよっ」



布団の端を掴みゆさゆさと揺さぶり掛けて来る少女に、堂上は寝起きの人間らしからぬ力でそれに対抗する。
少女が引っ張ろうとしても布団は堂上に強く握り込まれピクリともしない。
それに腹を立てた少女は、その小さな胸に入る限りの息を吸い込み、そして―――。



「とうっ!!」

「ぐっ、ぅあっ!」



堂上の腹目掛けてそれはそれは見事なダイブ。
子供と言ってももう5歳になる少女の体はそれなりに重く、それにいきなり圧死掛かられたら幾ら日頃から鍛えている堂上でも一溜まりもない。
激しく噎せ込み、生理的に浮かんだ涙越しに諸悪の根源をきっと睨んだ。



「〜郁っ!!腹には飛び乗るなとあれほど言っただろーが!!お前その歳で人殺す気か!?」



怒鳴られ郁と呼ばれた少女はしかし、堂上の腹の上で楽しげに笑っている。



「だぁーってあつしおにぃちゃんがおきないのがわるいんだもーん」



小さな唇を尖らせて得意気に鼻を鳴らす郁に、堂上は肩から力が抜けていく。



「…ったく、お前は」

「おきる?」

「あぁ起きる!だからさっさと降りろ馬鹿!」

「きゃーこわーい!」



郁はそう言ってけらけら笑って堂上の部屋を出て行く。
とんとんと階段を降りる足音を聞いてから、堂上はゆっくりとベッドから足を下ろした。




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