気まぐれ短編
□Princess
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電車を乗り継ぐことおよそ一時間。
さらに駅から十分。
閑静な住宅街の中に、そいつのマンションはある。
「相変わらず綺麗なマンションだなー…」
はは、とオレは苦笑しながら305号室のチャイムを鳴らす。
ピンポーン
なんともアットホームな音色。
やがてた、た、た、と軽やかな足音が聞こえてきた。
「はーい、どちら様ー?…って、小川!」
「よ、小西」
長い髪をゆるくサイドで束ねた…一見女子大生ながらも、同い年である友人、小西紗和。
もう松雪なんだけど…まあ、小西は小西だしな。
「あ、藍も呼んでくるね。藍ーっ」
あたふたと走って行った小西の後から、ひょこっと顔を出したのは、葵。
あどけない表情が小西によく似た二人の愛息子くん。
オレはあお、と呼んで可愛がってる。
「よ、あお。お前ももう来年は小学生か〜」
「ひさしぶり!ともき。ぼくもうね、さかあがりできるんだぁー」
「お、すげーじゃん」
えへへー、と笑う顔は癒し系で、小西そっくりだ。
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