シリーズもの&中編
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愛して止まなかったアイツ――
幸せはすぐに消えてしまう。
まるで手のひらに乗った雪のように、
儚く、
だけど
名残惜しく――――
「政宗、あのね。」
大事な話があるの。
そう言って俺を呼び出した杏。そういえば杏が告白してきた時もこう言って呼び出したんだっけな。
屋上に俺を呼び出した杏はずっとうつむいたままだった。でも、何かを決心したようにまっすぐに俺をその大きな瞳にとらえた。
杏は、可愛い。
大きな瞳にピンクのうすい唇。さらさらの黒髪は長くて、それでいて肌は透き通るように白い。学年で可愛い女子と言われたら真っ先に杏の名前があがるほどだった。
そんな杏とは席が近くなったことから仲良くなった。その辺の女たちは俺に媚を売るように無駄に声を高くして甘ったるいしゃべり方で体をなすりつけてくる。気持ちわるい。でも、杏はいつも笑顔でふわふわしている。でも、ぜんぜん嫌味じゃなくて誰にでも平等に優しいんだ。いつしか俺は杏に惹かれはじめ好きになっていたんだと思う。
その杏が頬を赤く染めて目に涙をいっぱい溜めて必死に俺に想いを伝えてきた。
「私、ね。政宗のこと、、、好き、なの。」
俺は耳を疑った。あれだけ想っていた杏に、俺、
告白されてる?
杏も俺と同じ気持ちだったことに感動してしばらく言葉がでなかった。
「政宗?」
不安そうに俺を見上げる杏を思わず抱きしめ俺も気持ちを伝えた。
幸せだった。
幸せすぎてこわかった。
でも、
嬉しかった。
この気持ちが、幸せが永遠に続くのだと思っていた。
でも、
幸せは音をたてて崩れ去った。
「あのね、政宗。その、私と別れてほしいの。」
今度こそ聞き間違いだと思った。でも、そうではないとすぐに思い知った。あの日よりもたくさん涙を溜めて、いや溜めることが出来ない量の涙がその透き通った白い頬に一筋の光る筋を残す。
――ああ、終わりなのか。
俺の幸せは。
俺は別れたくないと伝えたけど杏は辛そうに顔を歪めて「ごめんね。」というだけだった。
「Good morning杏!」
挨拶をすれば
「おはよう、政宗。」
返ってくる返事。
それだけでも今は幸せを感じてしまう。
手を伸ばせば
その細い腕を
その長いさらさらの髪を
その眩しい笑顔を
―――捕まえられそうなのに
この手をどんなに伸ばしても
キミの心には届かない。
ーーーーーーー
あとがき
今回は政宗サイドです。
政宗もヒロインちゃんのまっすぐなところ優しい笑顔に惹かれていたのです。だけど訪れた突然の別れ。
女の憎しみって怖いです。
ヒロインちゃんと政宗は両思いです。
だけどすれ違ってます。
きっとまたふたりの心が巡り会いますように。
ここまで読んでくださり有難う御座いました。