シリーズもの&中編
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あの日。
政宗が私を抱きしめてくれた日。
「ごめん。」
そう言って政宗の腕を振り払い、教室を飛び出した。政宗は様子がおかしい私にそれでも優しくしてくれた。でも、私は答えられない。だって私が、私が、思いを伝えてしまえばきっと政宗に危害が及ぶ。私が我慢すればうまくいくの。高望みなんて、しない。政宗には、伝えられない。ううん私に伝える資格なんてない。もう、政宗の手を引いてはいけない。
走って教室を出てきたから、だんだん息が上がってきた。もともと運動は好きだけど体力が素晴らしい!ッてわけじゃないしずっと走り続けるなんて私には無理で。
トボトボと1人で廊下を歩く。外は少しずつ暗くなり始めていた。季節は秋。政宗と付き合いだしたのは5月上旬。あれからだいぶん月日が経ったなぁ。なんて昔のことに浸ってみる。少しずつ寒くなってきたな。コートを着てない今の格好では少し肌寒い。
「あれ?杏?」
落ち着いた調子のその声の主は
「沙羅。」
目の前には私の唯一無二の親友、沙羅がいた。
会えたのはすごく嬉しかったけどでも、会いたくなかった。だってこんな顔、沙羅に見せられない。
「杏、泣いてるの?」
ほら、やっぱりバレた。
「な、何でも「ないわけないでしょ。」うぅ。」
何でもない、なんて沙羅には通用しない。
「ほら、私が全部聞いてあげるから。話してみな。」
優しい声色の沙羅。普通こういうの(←今の私みたいなの)みたら面倒って思うんじゃないの?――やっぱり沙羅には敵わないなぁ。
「ね?」
沙羅が優しく笑った瞬間私の目から涙が溢れた。
「沙羅ぁ。」
親友に抱きついて泣きじゃくる私を沙羅は、
「よしよし。近くの公園で話そ。」
と頭を撫でながらゆっくり歩いて、意味分からん私の話を聞いてくれた。
「う、ぅえ。ヒック。」
今までこんなに泣いたことなんてなかった。きっと沙羅のおかげだね。
一通り私の勝手な思いをぶつけてしまった。
「沙羅、、、ごめん、、ねぇ。なん、か、いっぱいしゃべっちゃった。」
泣きながら笑う私に
「強がらなくていいんだよ。」
って優しい沙羅の言葉。
いつもなら「泣くか笑うかどっちかにしなさい!」って怒るのに。
「でもさ、」
沙羅が話し出す。
「杏は別れた今でも伊達政宗のこと好きなんでしょ。」
「え!?」
いきなりでびっくりした。
でも、確かにそうなんだよ。
私、今でも政宗のこと好き。
「ふふ。」
頭の中で呟いたつもりだったけど声に出てたらしい。沙羅が笑う。つられて私も笑う。
「杏は笑顔が似合うよ。笑ってな。」
まったくホント敵わないなぁ。
―――私は政宗が好き―――
これは変わりようもない誰にも消せない事実だってことを
――再確認――
ーーーーーーー
あとがき
今回は友情物語ですね。でも、きっと次回辺りで話が動き出す?のかな?
とりあえず私は沙羅ちゃんみたいな人好き!!(←意味分からん)
でゎでゎ次回をお楽しみに!!(←なんて言ってみる、爆)