シリーズもの&中編

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好きという気持ちから逃げている。


確かにそうかもしれない。
杏を傷つけるとか理由をつけて結局は自分が傷つきたくないだけで。拒絶されるのが怖くて。

臆病なだけなんだ。

それでも、それでも、お前は受け止めてくれるというのか?



杏side


あの日から政宗と話せてない日が続いている。
自分で政宗の手を振り払ったのだからしょうがないか。


「ねぇ、ちょっと杏ちゃーん?放課後なんだしちょっと遊ぼうよー。」

甘ったるいしゃべり方。あいつだ。
高橋だ。

もういい加減やめてほしい。
そろそろ私も疲れたよ。

反抗することなく高橋についていく私は馬鹿なのかもしれない。でも、もうどうでもいいの。

あの日沙羅に相談して気づいた私の気持ち。

政宗を好きってこと。

でも、この気持ちは伝えられない。
なぜかって?
政宗に拒絶されるのが怖いの。こんな私をまだ好きでいてくれてるなんて、信じられないの。さんざん振り回しておいて今さら好きなんて。あんなに私を大事にしてくれたのに、私は何も返せてない。だから、私はせめてもの償いに政宗の幸せを願います。


いつものように体育倉庫に連れ込まれる。
ガチャっと鍵をかける音がする。

あぁ、また始まるの――。

そう思ったけど何だかいつもと違う。
心なしか人数が多く見える。倉庫の奥は暗くてよく見えない。でも、影がたくさんあって人がいるのだけは確認できる。
もしかしてあれは―――!!


「そうよ。もう気づいた?今から何をされるか。頭の悪いあんたでもわかるよね?」

高橋は意地悪く笑い

「やっちゃって!!」

と高らかに合図した。

とたんに奥の影が動き出して、



「んっ!!」

口を塞がれ猿轡をはめられる。
両腕は絡め取られ壁に押し付けられる。

視界にはあやしく笑う男が映った。
必死に抵抗して足をじたばたさせるけど、女1人の力が男数人に敵うはずもなく。ばたばたさせた足もつかまれて無理やりに開かされる。

「ひゃら!はなひれ!(やだ!離して!)」

今までこんなことなかったじゃない。
こんなことって……。

恐怖で涙が浮かぶ。

「あーあ。泣いちゃってる。可愛い。」

気持ち悪い男子生徒の笑い声。
やめて。触らないで。

高橋たちは笑って見てる。
そして

「そいつ好きにしていいよ。あ、ちゃんとビデオと写真撮ってね。」
とだけ残し体育倉庫を後にした。
この体育倉庫は普段使われることはなく、滅多に人が来ない。
もちろんのこと高橋たちが助けを呼んでくれるはずがない。

1人の男子生徒の手がシャツのボタンにのびる。そして、

バサっ―

「ひひゃーーーーー!(いやーーーーー!)」

こわい怖い恐いコワイ。
やだやだやだやだやだ。

助けてよ。誰か!誰か助けて!

助けて政宗!

こんな時でも頭に浮かぶのは君の顔で。

シャツに手をかけた男子生徒が下着に手を伸ばした時―――!!


ドカーーーンっ

すさまじい音とともに体育倉庫のドアが吹っ飛ぶ。


政宗!!

とたんにそう思ってしまった。そんなはずなんてないのに。

それでも、政宗なら……


私の予想とは裏腹に現れたのはオレンジ色の頭。隻眼ではなくいつもは悪戯っぽい瞳を持つ彼。でも、今は怒りに満ちた瞳。


「ふぁふへふん!(佐助くん!)」

そう、現れたのは猿飛佐助君。
同じクラスの男友達だ。

どうしてここに?
驚いたけど助けに来てくれたのが嬉しくて涙がさらに溢れた。

「ねぇ、あんたらさぁ。男としてそんなことしてもいいと思ってるわけ?ねぇ?」

すごい黒いオーラを放ってる。

「い、、いや、、、うぐっ!」

男子生徒が答える前に佐助くんは手早く一番前の男子生徒の腹に一発。
そして次々と男子生徒を殴り飛ばす。

そして男子生徒たちはそそくさと逃げていった。


「杏ちゃん!」

佐助君は私のもとに駆け寄って

「大丈夫?」
と声をかけながら猿轡をとってくれた。そして自分のブレザーを脱いで掛けてくれた。

「あ、……。」

ありがとう。
そう言いたかったけどうまく口が動かなくて。

ぎゅっ

不意にそのときは訪れた。
優しい温もりに包まれる。

「さ、、すけ、、く。」

「しゃべらなくていいよ。怖かったね。もう、大丈夫。」

その言葉があまりにも優しくて、こらえきれない涙が頬を伝った。









ーーーーーーー
あとがき

はい、まさかの佐助登場です。
本当は助けにきたのを政宗にしてそのままハッピーエンドにしようかと思ったのですが。やはりこの二人にはもう少し悩んでもらうことにしました。これからはヒロインと政宗と佐助の三角関係が展開されると思われます。

では
ここまで読んでくださった皆さん有難うございました!!

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