シリーズもの&中編
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私の名前は杏です。
最近とても悩んでいる事があります。
彼といると心臓が勝手にドクンと鼓動が跳ねるのです。
彼の言葉1つ1つに喜んじゃったり落ち込んじゃったり。
そう、彼。
伊達政宗君のせいで。
「Hey!杏。この問題のことなんだが…。」
「ひょわっ!」
いきなり後ろからぐっと顔を覗きこんできた伊達君。
「ひょわって…。」
私のリアクションが面白かったのかそれからしばらく笑い転げてしまった。
「何か用だったんでしょ!伊達君。」
少し笑いがおさまったのを見計らって声をかける。少しだけ声が上ずってしまった理由はわかりません。
「あぁー、この問題なんだが…。」
そこまで言ってそれっきり黙りこんでしまった。
私は訳が分からなくて黙って伊達君の顔を見つめていた。こうしてよく見ると本当に綺麗な整った顔をしてるよね。成績だって優秀だし運動神経だって抜群だってクラスの女子が話してたような気がする。
しばらく思案顔で思い悩むと顔を上げてじっと見つめてくる。なんだか恥ずかしくって心臓がドキドキいってて目を合わせられない。すーっと視線を泳がせる私をいとも簡単に捕らえた伊達君の視線。
隻眼の綺麗な瞳には私しか映っていない。
とくん。
いつものドキドキとは違って静かにゆっくり鼓動が跳ねた。
「あのさ、伊達君っていうの止めろ。」
少しの沈黙の後、伊達君はそう言った。
伊達君を止める?
しかも何故か命令形?
「あ、ごめん。やっぱり馴れ馴れしかったよね。なんて呼べばいいかな?伊達君…はダメだから伊達さん?いややっぱり最初はフルネームが礼儀かな?うーん…。」
頭の中をグルグルと小さな私が駆け巡る。
ちょっとだけ。ほんの少しだけ止めろって言われたことが悲しかったような気がする。
真剣に悩んでいる私を見ながら政宗君はまた笑い転げる。
「?」
何を見て笑っているんだろう?
疑問に思って考えるのを止めて伊達君(まだ、そう呼ばせて)を見ると。
「!!」
なんと、私を見て笑ってました。
なんで?私なんか変なこと言っちゃった?
頭になんか付いてるとか?いや、それよりもさっきのお弁当ののり巻おにぎりの海苔かな?
慌てて手鏡を取り出してササッと身なりをチェックするけど一応おかしなところは見当たらない。それじゃ一体何を見て笑ってるの?
分からないと顔に書いてあるような私の表情を見て伊達君はさらに笑った。
その笑顔がちょっとだけ眩しく感じたのはきっとこの「心臓」の病気のせいだ。
「Ah-。笑わせてくれるぜ。」
「だから、何に笑ってるのよ?」
少しだけ落ち着いた伊達君にようやく疑問をぶつける。
「俺は伊達君を止めろって言ったんだぜ?それがなんで…っ。」
また笑い出してしまった。私はなにか間違えたのだろうか。
「伊達君止めろ、つったら普通は「政宗」ってなるだろうが。」
はい?
今なんて?
「政宗って呼べよ。伊達君なんて他人行儀だ。」
爽やかな笑顔…とは正反対の意地悪な笑顔だった。ニィっと口角を吊り上げて。
「ま、政宗なんて…っ!む、無理!私今までで一回も男子を呼び捨てなんて。名前で呼んだ経験もないのにっ。」
まさかの発言におろおろとする私をまたおかしそうに見つめ、
「俺は杏って言ってるだろ。いいから政宗って呼べ。」
なんなんですか、この理不尽な命令は…。名前を呼ぶだけでこんなに渋る私を世の中は奥手どな初心だの何だの言うだろうけど、万年委員長とか真面目な女の子キャラの私にはちょっとハードルが高いんです。
でも、そんなに真剣に見つめられたら無下にするわけにもいかず…。
「ま、政宗………くん。」
結局最後に「君」とつけたけど政宗…君は少しだけ満足そうに微笑んだ。とっても優しげなその表情にまた「とくん。」と静かに鼓動が跳ねた。
最近心臓がおかしいの
「くんはいらねえんだけどな、まぁ今は許してやる。」
そう言って悪戯に頭をポンっとして問題集を広げる彼。
こんなに心臓ドキドキじゃ、教えられないよ。
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あとがき
皆さん!こんにちは!
拍手新連載「この恋こそいちばんであれ」スタートです。
題はお題配布サイト「ハニィラブソング」さんからいただきました。LINKにリンク先がありますのでぜひぜひ足を運んでみてください。素敵なお題がたくさんあります。
今回のテーマは「真面目な女の子と政宗様のゆっくり進む甘い恋」ですねっ!
前回の拍手連載がとっても切ない感じだったので(最初の方とか)今回は頑張ってほのぼの甘いお話を書こうと思ってました!
と、そこで思いついたのがこのお話です。
本当にゆっくりまったり進んでいく近づいていく二人の距離ですが…珍しく初々しい政宗様にも注目ですよ(笑
ではでは次回もお楽しみに〜!
ここまで読んでくださった皆さん有難う御座いました。
第1話―完.