短いお話
□これからもあなたと、
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カチカチかち――
時計の秒針はせわしなく時を刻むけど。
「佐助さん。」
ポツンと呟く私の声は秒針の音にかき消されるくらいか細いものだった。
佐助さんのことは中学生の頃から好きだった。
佐助さんは2つ上の先輩だから私が中1になった時すでに中3。1年しか一緒に過ごしてないのに、いや一緒に過ごしたなんて言えるほどでもない。でも、それでも佐助さんは、、
高校1年生の春――
佐助さんと一緒の高校に行きたくて必死で勉強してやっとの思いで入学したこの高校。でも、
「広すぎ!!」
入学式って体育館であるんだよね!?
体育館ってどこ?
仲の良かった友達とは高校は別になり心細かった心は今、独りぼっちという状況にさらに弱りきっていた。
「ぅう、、、。」
自然と頬を伝う温かい雫。それが涙だとわかるのにそんなに時間はかからなかった。私はその場にうずくまって1人で泣いた。そしてずっと告げられることのなかった思いを1人で言葉にした。
「佐助さん。
ずっと好きだったんです。
きっとあなたは私の名前すら知らないだろうけど。」
「名前知ってるよ。水城杏ちゃん。」
大好きな声が上から降ってきた。こんなところにいるはずないのに。ついに幻聴まで聞こえちゃったよ。
「んで、俺様もずっと好きだった。」
その言葉にびっくりして勢いよく顔をあげるとその反動で後ろにこけちゃった。
は、恥ずかしいぃいぃぃ。
「そんなに俺様のこと好きだったんだねぇ。なんか嬉しい。」
笑いながら差し伸べてくれた佐助さんの手を恐る恐る握るとグイっと勢いよく引っ張られてそのまま、
唇に温かく重なった。