捧げ物

□Listen
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手を繋いで歩く商店街。
今日はサッカー部が休みだから、久々のデートに来ている。


「あ、あれ可愛い!」

ショーウインドーに飾ってあるネックレスを指差してて言えば、西野空は

「向こうのやつのが似合うんじゃないのか?」

と私が指差したやつより右の方にあるのを指差す。

「ホントだ、そっちのも可愛い」


端から見ればうるさいかもしれないけど、ずっとこういうデートに憧れてたからどうしてもはしゃいでしまう。

「で、どっちがいい?」

「え?」

いきなりの質問に西野空の方を見れば、「どっちのネックレスがいいんだよ」と訊かれた。

「え、買ってくれるの?」

「ああ、久しぶりのデートだしな。それにこの長さなら制服の下に隠れるから学校にして行けんだろ」

そう言う西野空の頬は、ちょっと赤い。
「え、でも…」と躊躇えば、「気にすんなって。早く決めなきゃ俺が決めるぞ」と言って微笑む。


「じゃあ、こっち」

そして、すかさず私が選んだのはもちろん西野空が選んでくれた方。

「そっか、じゃあ、買ってくるから待ってろ」

そう言いながら店の中に入って行く西野空は、どこか嬉しそうだった。
…そしたら、私は何をプレゼントしようかな。


なんて考えてたら、西野空がお店から出て来た。

「お待たせ。…後ろ向いてみ?」

言われた通りに後ろを向くと、今買ってきたネックレスを付けてくれた。

はい、と言われ前を向く。

「ありがとう!」

買ってくれて、と付けてくれて、のふたつの意を込めて言えば、「…似合ってる」と小さい声で言ってくれた。

「でさ、私もなんかプレゼントしたいんだけど」

「名前」

言い終わるか終わらないかくらいで、西野空は即答した。

「え?」

イマイチ理解できなくて、聞き返す。

「だから…西野空じゃなくて、名前で呼べよ。付き合ってるんだしさ」

「プレゼントは…」

「それでいい」

安上がりだろ、と笑う。
…いや、そうじゃなくて。

「…なんか…俺ばっかナマエのこと好きみたいで、ズルいじゃん」

急にしんみりした感じになって言うもんだから、やっと、名前で呼ぶことが一番のプレゼントかな、って思うことができて。

「…宵一」

やっと出た一言も、恥ずかしさで小さな声になってしまった。



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「やっと呼んでくれたな」

聞き逃さないでそう笑ってくれたのが、凄い嬉しかった。




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みかん様へ捧げます!

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