捧げ物

□彼女の証し
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―コンコン

朝の4時。
静かな宿舎の廊下に、ノックの音が響く。

「ナマエ?」


その部屋にいるはずの人の名前を呼べば、ドアが開いた。

「おはよう」

「おはよう。ごめん、寝癖直してた」

「大丈夫。それより、本当にいいの?」

こんな朝早くから練習付き合ってもらっちゃって。
そう聞けば、「全然大丈夫だよ」と笑顔で返された。

「ところで、何の練習をするの?」

「シュート。もう少しで新しい必殺技が完成しそうなんだ」

「そっか。じゃあ、ボール拾えばいいかな」

そんな話し声が廊下に響く。
そして、宿舎から出れば眩しい程の朝陽が俺達を照らす。


「はい」

ウォーミングアップをしてれば、ナマエがボールの入ったかごを持ってきてくれた。

「ありがとう。…じゃあ、始めようかな」


そして、始めようとボールを足元に置いたとき。


「くしゅっ」

「?」

どうしたんだろう、とナマエの方を向けば、

「ごめん、ちょっと肌寒くて」

とナマエは笑った。
どうやら、くしゃみだったらしい。
…よく見てみれば、ナマエの着てるTシャツは薄そうだ。
早朝にし
ては寒いかもしれない。

「ほら、コレ」

そう言って、俺が着ていたパーカーを差し出せば、え?と聞き返された。

「はい」

近づいて、ナマエの肩に掛けてあげる。
そうすれば、やっと意味がわかったみたいで「いや、でも…!」と肩から外そうとした。

「いいの」

言いながらナマエの手を止めて、パーカーを元の位置に戻す。

「どうせ動けば暑くなるからさ」

そう言って笑えば、ナマエは頬を染めてありがとう、と呟いた。

「それに…」



彼女の証し


「他の奴が寄ってこないように、虫除けにもなるだろ?…だから、今日1日ずっと着ててくれたら嬉しいな」

そう言えば、ナマエはさっき以上に顔を赤くして頷いた。




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雪奈様へ捧げます!

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