イナイレ

□涼のお届け
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うだるような暑さの帰り道。
午後は熱中症が心配だからとかで、部活はナシになった。

「暑い」

「言うな。余計暑くなる」

一緒に帰ってはいるものの、近づくと暑いため微妙な距離が開いている。


「一郎太さ、髪長くて暑くないの?」

「首にかからないからそこまででもないな」

「へえ」

「ああ」


暑さのためか、喋るのも段々億劫になってきて、会話が少なくなる。
でも、こういうのってちょっと寂しいよなぁ。
そんなことを考えていると、ナマエが俺のジャージの裾を引っ張った。

「アレ」

「…氷?」

ナマエが指差す方を見れば、駄菓子屋さんの前にでっかい氷が置いてあって、ちびっ子たちが楽しそうに触っている。

「触りたいのか?」

「うん!」

さっきまでのけだるさなんて微塵も感じさせない元気な返事。
しょうがないなぁ、寄ってやるよと言えば、氷に駆け寄って触り始めた。

「一郎太も触りなよ」

そう言い、俺の手を掴んだナマエの手は、濡れていて冷たく、とても気持ちいい。


「ほら、そこのお嬢ちゃん」
冷たいー、気持ちいいーなんてちびっ子に混じって和んでいるナマエに、駄菓子屋さんのおばあちゃんが話しかけた。

「え?」

「こんの暑い中彼氏さんほったらかしたらアカンよー、これあげるから帰り道これで涼みー」

そう言っておばあちゃんが差し出したのは、店の前に置いてあるのよりは随分小さいが標準的なのよりは全然大きいサイズの氷。

「え、いいの!?」

「構わんよ」

ありがとう!とお礼を言ってナマエが俺の方に戻ってくる。


「なんかこれだけでスゴい涼しくなった気がする」

「だな」



涼のお届け

暑い日の帰り道も、案外いいかもしれない。

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